東京地裁平成29年7月3日判決
出版会社に勤務する女性従業員が、第2子を出産して育児休職をとり、復職願いを会社に申し出たところ、以前のポストはないこと、復帰するならインドの子会社に出向、または業務内容を変更して大幅な減給しかないと言われて、退職勧奨を受けた。
女性はこれを不服として、均等法、育児・介護休業法の禁じる不利益扱いに当たるとして、労働局に調停を申し入れた。会社側は和解案を拒否し、女性の協調性のなさ、指揮命令違反を理由として、女性を解雇した。
女性はこの解雇は、妊娠・出産を理由としたものであると主張し、会社での以前の地位の確保と賃金の支払い、慰謝料220万円を求めた。
判決:慰謝料55万円
判決では、会社側が主張する、女性の業務命令違反、職場の秩序を見出したことは認識はしものの、それに対しては、文書での注意など適性な手続きは取られていないことなどを理由に、妊娠・出産の時期と近い時期に解雇が行われた場合は、少なくとも、均等法、育児・介護休業法の趣旨に違反したものとみなされると判断した。
結果として、解雇は無効、慰謝料については、常識的に受け入れられない部署への移動や待遇を提示され、退職勧奨を受けて、その後解雇されたことを理由に、55万円の支払いを命じた。
本件は、女性の勤務態度が悪かったことは認めつつも、それを理由に解雇されるまでの対応を勘案している。もし、会社が段取りを適切にとって解雇に至っていれば、解雇が正当と認められた可能もあると思われます。
慰謝料の金額としては高額ではないと感じるかもしれませんが、慰謝料を取得できる可能性がある判決としては画期的でしょう。