チャットで暴言
会社の代表取締役が、従業員に対して、直接ではなく、チャットを使用して罵詈雑言を浴びせた事件があります(東京地裁平成27年1月15日判決)。
従業員への嫌がらせ
この事件は、医療関係の人材紹介会社の社長が、従業員に対して、チャットを使用して「まじでむかつくお前」「いなくなって欲しい」「舐め過ぎだ、どれだけ損害をかけていると思っているんだ」「うんざりだ」と暴言を送り続けました。
それだけでなく、会社に損害を与えたとして1000万円の機会損失を与えた始末書の提出を命じられたりしたことで、従業員は、精神的苦痛を受けた1年後には退職届を提出して、退職を余儀なくされました。
判決
従業員は、退職1ヶ月後に別会社に勤務を始めましたが、嫌がらせをうけた会社と社長に対して、慰謝料300万円を請求しました。
判決では、たとえ従業員が業務で失敗したとしても、チャットでの執拗な暴言は指導の範囲を超えていること、また、従業員の能力以上の業務を与えて、達成しなかったという理由で根拠もなく1000万円の機会損失を与えたと始末書をか書かせる行為は、不法行為にあたると判断しました。
実際の慰謝料
従業員は、嫌がらせによる苦痛とそれによる退職による慰謝料を請求しましたが、実際、従業員が嫌がらせを受けていたその1年後に退職していること、その後1ヶ月で問題なく別会社で勤務していることを考慮して、不法行為と退職との関係は認められないとされ、結果、慰謝料の金額は50万円にとどまりました。
退職との関係までの因果関係は立証が困難であることがよく理解できる事例です。