同僚男性社員から殴られました

航測会社女性従業員暴行解雇事件

大阪地裁平成13年11月9日判決

大阪地裁平成13年11月9日判決に、後輩男性から顔を殴打されて、長期休暇にいたり、その結果解雇を言い渡されたたことを不服として提訴した事件があります。

事件の概要

航空機による写真撮影を業務とする会社に勤務する女性社員が、後輩の男性社員に、物品の注文を指示したところ、男性社員は、「自分でやればよい」「俺は女に指示されるのは嫌いだ」と言い返されて、最後には、女性社員は顔面を殴打されました。

女性社員は殴られた後も、仕事を継続したものの、その後病院へ行き、顔面挫傷、頸部捻挫の診断を受け、顎関節に激しい痛みがあったために、欠勤を継続しました。

会社の対応

欠勤を続ける女性社員に対して、会社は、休んでから3ヶ月間は出勤扱いとしていましたが、3ヶ月後からは休職扱いとして賃金を支払わなくなりました。

その後も休み続ける女性社員に対して、「正当な理由なく職場を離脱したとして、解雇」しました。

提訴

女性社員はこれらを不服として、男性社員と会社を相手として、治療費411万円、慰謝料500万円の支払いと、雇用契約上の契約の地位にあるとして、賃金の支払いを請求しました。

裁判例[判決]

男性社員の殴打によって受けた女性の傷害は、顔面捻創と頸部捻挫にとどまり、女性社員が訴える頭痛、頚部痛、めまいについては、女性社員が暴行当日も残業し、翌日も出張していたことから、治療の遅れも原因と判断されました。

その後の経緯から、女性社員と男性社員や会社とのやり取りから、女性社員が被害感情を強くしたことからも、心因的原因もあるとされ、治療費全てを、加害者である男性社員の負担とはせず、慰謝料60万円を相当としましました。

また、会社としても、女性社員を気遣い、1,2ヶ月の欠勤を想定して、賃金を払っていましたが、長期にわたっての賃金請求は理由がないとして却下されました。

ただし、社員の暴行による被害がでたことは、会社にも責任があり、女性社員の治療を待ってから復職させるよう努力することが必要であって、いきなりの解雇は信義に反するとして、解雇は無効としました。

暴行とその後の対応

男性社員は普段から女性社員に対して、不満をもっていたとのことですが、だからといって、顔面を殴打するという暴力が許されるわけではありません。

女性社員は、暴行直後は仕事を継続しましたが、やはり精神的に打撃をうけて、それによって長期休職にはいっていることは、事実です。

ただ、男性社員による顔面殴打だけで、深刻な負傷ではなくて、男性社員への恨み、会社への反感なども大きく作用しているため、治療費の何割かが控除された金額で判断されています。

会社は、一定の責任を感じて、3ヶ月は賃金を支払っていたものの、仕事もせずにずっと休み続ける社員に対して、これ以上は払えないとの判断も正当だと、評価されています

ただし、仕事を起因として休職している社員を、いきなり解雇することはできません。

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