事務職から、力仕事の職場に異動させられました

自動車タイヤ等販売会社女性従業員配転事件

自動車のタイヤを輸入販売する会社に勤務し、事務所内で事務をしていた女性社員が、お客様からの電話を受けたとき、タイヤの知識がなかったために、男性社員に対応を代わってもらっていました。

この電話の対応について、社長が女性社員に文句を言ったときに、口論になり、社長は女性社員に解雇を言い渡しました。

女性社員はこれを不服として、組合に訴えたために、解雇は撤回されましたが、社長から、タイヤ梱包場所に異動を命じられ、その倉庫から動いて、事務所に立ち入るこをを禁じました。

女性は、この異動は、口論になったことを恨んだ社長の復讐であり、この異動を無効とし、慰謝料を請求する訴えを提起しました(福岡地裁小倉支部平成16年11月4日判決)。

事務所での電話対応に問題があったか

女性社員は、事務所内で、主にパソコンに従事する仕事をしており、専門的なタイヤの知識があったわけでなく、商品知識が乏しいのは、女性社員だけではありませんでした。

したがって、女性社員が、電話での問い合わせに答えられないとき、専門家に対応をお願いすることは、問題になるとは思えません。その点をもって、女性社員が事務職として不適格であるとはいえず、配置転換の必要性もありませんでした。

配置転換に必要性があったか

人手不足な部署に、異動になること自体は問題はありませんが、女性が、力や大量を必要とするタイヤの梱包作業には適しておらず、力仕事の人員として、女性社員を選ぶ必要性がありませんでした。

もちろん、現在では妊産婦を除く女性については、ごく一部の業務以外は、就業制限はなく、法律上は可能です。

しかし、本件については、社長から解雇を言い渡されて、組合を通じて解雇を撤回した後の異動であり、このような配置転換は人事権の乱用とされました。

不当な動機があったか

業務上の必要性や合理性もない異動や、または業務上の必要性があったとしても、この配置転換が、不当な動機や目的でなされたものであるとき、もしくは労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるなどの事情が存在する場合は、この配置転換は職権濫用に当たると解されています。

また、女性社員は、タイヤ梱包作業の場所から動けず、事務所への立ち入りも禁止されています。従業員の隔離は、見せしめや嫌がらせとなり、正当な理由とは認められません。

慰謝料50万円

この判決では、社長の行為は、職権濫用にあたり、社会的に許容された範囲を逸脱する行為であるとして、不法行為に該当し、慰謝料50万円が認められました。

慰謝料の額としては少額ですが、慰謝料が認容されている事実は重く見るべきだと考えられます。

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