事件の内容
札幌の病院で準介護職で採用された男性は、試用期間経過後1年間の労働契約を結んで勤務していました。
その後も、特に期間を定めずに、そのまま4年間勤務している間に、新しい上司がやってきて、その上司から「笑顔がない」「患者や他の部署から苦情がでている」「不満そうなオーラがでている」と言われ、改善するように注意されました。
介護職の男性は、人事考課の点数も、70点の合格点を上回って、79点、74点を獲得していたものの、その新しい上司が来た時だけ68.5点と、わずかに合格点を下回ったことを理由に、次の契約更新はしないと言われてしまいました。
男性は、自分の労働契約は期間の定めがないものの、他の職員同様に継続して更新勤務していたことから、突然の解雇は無効であり、また、「不満そうなオーラ」などという中傷に傷ついたと、慰謝料150万円も同時に要求しました。
判旨
男性は契約更新をして、他の介護職の職員同様に、継続勤務している状態は、正社員と差異がないことから、実質的には、期間の定めがない労働契約と同じであり、突然更新を拒否されるのは、無効であると解されました。
また、人事考査の点数も十分合格点に達しており、一度わずかに下回ったことを理由にするのは無理があること、今回の事件の一番の理由になった「笑顔がない」などとは主観的な事柄であり、介護職の不適格を判断できないと、考慮され、最終的には、解雇は無効、慰謝料20万円(控訴後には45万円)が相当であると、判断されました。
解雇の理由
雇用者は、期間の定めのない労働契約をしているからといって、それを理由に、労働者を、突然の更新停止である、雇い止めにすることはできません。
実質的に、継続して勤務している状況などをも考慮して、その雇い止めが合理性、相当性を欠いていないかなどが判断されます。
また、今回の雇い止めの理由が、人事考課の合格点にわずかに達していないとすることも、容姿への中傷をする新しい上司の嫌がらせにも、捉えられるでしょう。
そうだとすると、嫌がらせを受けた男性の気持ちは一層傷ついたことを考慮して、慰謝料額も算定されています。
雇い止めに対する慰謝料は、困難であると一蹴する必要はないし、それは適切ではないとよく理解ができる好例ではないでしょうか。