安全配慮義務
会社と従業員の間で締結する雇用契約とは、採用時に「この会社で、こういう条件で働き、給料を払います」などを約束するものですが、ここに、会社は「社員の健康を配慮する義務を負います」と規定されている場合は、ほぼないでしょう。
しかし、この規定がなくても、会社は雇用契約で、社員を管理して労働を提供して利益を得ている以上、社員の健康が維持されるよう注意する義務を追うのが当然であると、判例は考えています。
平成20年3月1日にも、労働契約法では、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働するころができるよう、必要な配慮をする」としています。
安全配慮義務に制限はある
上記の「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働するころができるよう、必要な配慮をする」とは、どのような範囲でしょうか。
もし、無制限に考えると、例えば、会社のビルが何者かの襲撃により崩壊して、社員が死亡した場合、これを会社は予防できたかというと、不可能でしょう。
つまり、会社は社員の安全配慮義務として、あらゆる危険をすべて予測することはできません。
安全配慮義務は、「予見可能性」と「結果回避可能性」があるかどうかという範囲内になります。
予見可能性とは、社員の生命、身体に損害が起こることを予測できたじか、そして結果回避可能性とは、その損害を回避する手段をとることができたか、がポイントになります。
逆にいえば、予見可能性と結果回避可能性がない場合は、安全配慮をすることができないため、会社が義務違反になることは基本的にはありません。
義務の遵守と判例を参考に
安全配慮義務とは、抽象的な基準しかありません。
基本的にはケースバイケースになることが多いため、まずは、労働関係上の法令は遵守した上で、社員の健康診断を促進し、通知し、社員の健康を害しない労働環境の整備に努めてください。