裁量労働制の社員が過労で倒れました。会社に責任がありますか

ご相談内容

スタートアップのIT会社の経営をしています。会社の業績は伸びていて、中途採用でIT技術者も採用しており、全員優秀でパフォーマンスもよい社員ばかりです。

社員の希望もあり、私の会社では、IT技術者は全員、労働時間や場所を自由に決めて仕事ができる「裁量労働制」を採用しています。

ところが、先日入社して1年めの男性が、仕事を頑張りすぎて、自宅勤務中、突然過労で倒れて、深夜に救急車で運ばれました。仕事が忙しいとは聞いていましたが、本人はやる気があり、深夜まで仕事をしていたようです。

深夜働いているので、昼間は休んでいるのだろうと思っていたのですが、後から聞くと朝から晩までほどんど寝ないで働いていたようです。

会社は、裁量労働制を採用しているので、どれだけ働くかは、従業員にまかせています。この場合、会社は何か責任を負うのでしょうか。

裁量労働制

裁量労働制とは、実際の労働時間とは関係なく、労使協定や労使委員会で定めた時間を労働したものとみなす制度のことです。

裁量労働制は、2種類あります。1つは、「専門業務型裁量労働制」ともう1つは「企画業務型裁量労働制」があります。

裁量労働制は、従業員が自分の労働時間を自分で決めることができるので、従業員自身が労働時間を自分で管理して働く必要があります。ご相談者様は、IT技術者で、専門性の高い業務を行なっているので、「専門業務型裁量労働制」にあたります。

安全配慮義務

裁量労働制を採用している会社であっても、社員の働き方に対して責任がなくなるわけではありません

労働基準法38条の3では、裁量労働制を採用する場合にも、会社は労働者の健康を確保するために必要な措置を講じなければならない、定めています。

損害賠償責任

会社は、社員の安全配慮義務がありますから、ご相談者様の会社も、裁量労働制を採用している社員に対しても、社員の働き方に配慮する必要があります。

会社で過労で倒れた社員に対しても、仕事が忙しいことを聞いており、残業続きだったことが容易にわかります。

会社としては、この社員の疲労を蓄積しないように、定期的に面談して、なんらかの措置を講じるべきでした。例えば、忙しすぎるなら、他の人に仕事を分担する、または仕事を昼夜頑張らないようにカウンセリングする、などを行うことで、過労で倒れることはなかったと思われます。

その意味で、会社は安全配慮義務に違反しており、損害賠償責任が発生しています。

社員自身の責任

会社が、安全配慮義務違反を理由として、損害賠償責任を負いますが、それと同時に、裁量労働制を行なっている社員にも、労働時間を自分で管理する責任があることも事実です。

健康管理についても、本人の責任がありますので、昼夜働くなどはそれなりの落ち度があると判断されますので、その意味で、会社の損害賠償額は軽減される可能性は高いでしょう。

いづれにせよ、会社は裁量労働制のもとで働いている社員に対しても、安全配慮義務を果たせるような、仕組み作りをしなければなりません。


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