業務命令に従わない課長
外資系銀行に33年勤務している課長は、銀行が必須研修としている、生産性向上、効率改善等のための監督者研修に、業務多忙を理由に参加しませんでした。
それ以外にも、自己研鑽、部下の訓練、職場研修プログラムの作成に関する報告も提出せず、銀行側は何度か、研修の参加や報告書の提出を指示したにもかからわらず、仕事が忙しいと言って従いませんでした。
課長への処分と慰謝料請求
銀行は、業務命令違反として、この課長に対して、降格、役職手当の減額、受付への配置転換を実施しました。その後、銀行の希望退職者応募プログラムを経て、課長を解雇するにいたりました。
その後、課長は、銀行のこの対応に対して、慰謝料5000万円を請求しました。
判決文
東京地裁平成7年12月4日判決では、勤続33年の課長に対して、受付業務への配置転換は、その経験や知識に相応しくない業務であり、著しく就業意欲を失わせるものであり、その結果として退職させる意図であったと判断しました。
これは、パワハラ類型の中の、過小な要求、つまり業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと、に該当します。
裁判例では銀行の対応に対して、不法行為責任に対する慰謝料として、銀行に100万円の慰謝料の支払いを命じました。
過度なハラスメントに対する処分は、法人側にも十分リスクがあることを指摘できる事例です。