即席飲料製造等会社配転拒否事件(神戸地裁平成6年11月4日判決)
事件のきっかけ
製造会社で事務職に従事している女性が、上司である係長から、異なる支店への配置転換を打診されました。
しかし、その支店は、営業である男性社員のみが勤務して、女性社員が一人もいない上に、女子トイレがないことを理由に、女性は、転勤を拒否しました。
上司による嫌がらせ
転勤を拒否した女性に対して、係長は、仕事を与えなくなりり、「トイレ以外はウロウロするな」「今週は一体何をするのや」などと嫌がらせを繰り返して、女性社員の席も課長の前に移動して、苦痛を与え続けました。
その後、女性社員は、嫌がらせの差し止めを求めて、仮処分を申立、その、申立書の中で、配置転換を拒否した理由について、転勤先の支店には、男女別のトイレがないことを挙げました。
慰謝料請求
1年後、やはり転勤先の支店に事務を行う、女性社員が必要だとして、会社は転勤を命じましたが、女性社員は、違法な配置転換、嫌がらせ行為だとして、係長に対して、慰謝料として500万円を請求しました。
裁判例【判決】
使用者が労働者に対し、いかなる業務を担当させるかについては、裁量が認められていますし、正当な理由に基づき、一時的に業務をさせない措置も、合理的な範囲であれば、適法です。
しかし、業務をさせない理由が、不法な動機に基づき、相当な理由もなく、長期にわたる場合は、違法性があり、不法行為に該当します。
本件も、最初の配置転換の打診から1年間に渡り、女性社員に対して、仕事を取りあげていること、害意をもっていることから、合理的な裁量を逸脱していることは明らかであるから、不法行為を構成し、女性社員が精神的苦痛を被ったとして、慰謝料60万円が認められました。
また、この配置転換は、事務職の社員が必要であったことは明らかであり、業務上の必要性があったと認められています。
この支店には、男女別のトイレはありませんでしたが、日中、男性社員は営業で外出しており、女性社員が使用するのに問題はなく、社会通念上許される範囲を超えて、女性社員に不利益があるとは認められませんでした。
仕事外しと配置転換
本件は、上司による、長期にわたる仕事外しや嫌ががらせが不法行為に該当するか、また、配置転換は正当かという2点がポイントになります。
仕事外しや嫌ががらせの言動は、配置転換に応じないことを理由に、女性社員に苦痛を与えることを目的としており、これは不法行為に該当すると判断しています。
また、配置転換自体についても、業務上の必要性が認められて、使用者が労働者にどのような仕事を与えるかについては、裁量権を有しているとされています。