ご相談内容
35歳の女性社員です。周りの女性は結婚していきますが、わたしは、結婚する気持ちにはならず、仕事を毎日楽しんでいます。
仕事に没頭する毎日の私に対して、上司が、「男はいらないんだね」と嫌味を言ってきます。
口の悪い上司なので、軽口は多いのですが、この発言を何度もしてくることは、私の人格を非難しています。
上司から、触られたり、身体的なセクハラは受けたことはないのですが、この発言はセクハラにあたりますか。
言葉によるセクハラ
裁判で争われるセクハラ事例は、性的な関係を強要された、身体を触られた、など身体的接触が伴うことや、たとえ、身体的接触がないとしても、ホテルに誘われた、出張への同行を強制する、など性的関係に向けられた言動の事例が多くあります。
しかし、本人にとっての性的な発言のみでも、セクハラに該当します。
実際の事件
松戸市市議会議員である被告(男性)が、同じく市議会議員である原告(女性)に対して、「男いらずの○○さん」とあだ名をつけて、職場でそのあだ名で呼んだり、また女性が作成した活動報告書に記載している女性の名前の上に「男いらず」とふりがなをつけました。
女性は、このあだ名による行為は、セクハラと名誉毀損に当たるとして、男性に対して、慰謝料として290万円の損害賠償を求めた事件があります(千葉地松戸支判平成12年8月10日)。
判決
被告(男性)が使った「男いらず」という言葉は、男性と性的交渉を持たない女性、男性から性的交渉の対象にならないと思われる女性、恋人がいない女性などに対して「皮肉、からかい、侮辱」として使用されるものであるとして、その言葉はセクハラに該当するとしました。
慰謝料は、セクハラ発言に対して10万円、活動報告書に記載されたことに対して30万円、合計40万円が認められました。
セクハラに該当する言葉
セクハラは、直接的に性的交渉をせまったり、身体的接触をするだけではありません。
性的な言葉だけでも十分セクハラに該当します。
例えば、
– 容姿や体型について意見を言う
– 性的な冗談を言う
– おじさん、おばさん、○○ちゃん、と呼ぶ
– 女性は職場の花でいいと言う
– 結婚はまだか
– 子供はまだか
という発言などでも、十分でセクハラに該当します。
発言する側は、親しみを込めているつもりや単なる冗談のつもりでも、相手がその発言をどのように捉えるかが重要です。
セクハラにならなうよう、相手の立場に立ったコミュニケーションを心がけるべきでしょうが、思いやりを持って対応することで、過度にセンシティブになる必要まではありません。