Nさんは、大学卒業後、金融関係の会社に7年勤務した時点で、妊娠がわかりました。仕事にはやりがいを感じており、出産後も働くつもりで、妊娠を会社に報告したところ、上司から”戻ってきても席はないかもしれない” “家庭に入った方がいいのじゃないか”などとの発言がありました。最終的には、産前産後休業と1年の育児休暇を取得後、復職する予定で、休職に入りました。
育児休暇満了前に、そろそろ保育園を探し始めていた頃、人事部のOさんから連絡を受け、”すでに新しい人を雇用しているので、パート勤務でいいですか” ”子供のためにも育児に専念した方がいいと思いますよ”との発言を受けましたが、”頑張りますので、復職させてください”と伝えました。
数日後、社長名で退職通知書を受け取り、退職金が給与口座に振り込まれました。Nさんは、会社に電話をかけ、取り消しを求めましたが、”決定です”との一点張りでした。
数度の話し合いの末、会社は退職を撤回しましたが、保育園入園のための終了証明書の発行もスムーズに進まず、Nさんは子供を保育園に預けることができずに、育児休暇満了時に出社することはできませんでした。
Nさんは、これはマタハラに該当すると思い、インターネットの検索で知った労働局のあっせん手続きを申請することにしました。申請書には、退職勧告による精神的・経済的解決金の支払いがあれば、退職すると記載しました。
ところが、会社側の主張は、Nさんを退職扱いにしていず、本人は出社していないだけだと主張しために、話し合いは不調に終わってしまいました。
解決に向けて
休職要請時、復職時の不利益な言動 休職する時点で、合意書などの形で復職を約束する書面はかわすべきでしょう。というのは、会社側の対応は、妊娠にかこつけて、不利益扱いを一方的にするものですから、違法になりえるものなのです。会社側の主張を見るに、退職扱いにしていない扱いを主張するのはそもそもの休職時に、どのような理由によって、休業とするのかが明確に定まっていないことが原因です。そのため、復職を前提として、一時的な休職扱い、とりわけ産休にしたうえでの、不利益扱い(たとえば受領する賃金の減額)などを双方合意した上で、一時的な休業とすべきなのです。
退職通知の有効性 無効になりえます。解雇権濫用、マタハラを原因とする解雇権濫用の場合、解雇は無効であって、実は雇用契約が継続していると扱われます。そうすると、未払い賃金が発生するので、賃金請求できる余地が働きます。しかし、気をつけなければなりませんのは、ノーワークノーペイといって、実際の就労の事実がないと、賃金が発生しません。
復職時に就労証明書を出さないなどの対応について 従業員に解雇の不安をいだかせる対応は、不利益取り扱いを示唆する可能性が生じます。ハラスメントの一環として、重く見られてしまうでしょう。