年休を取りすぎと妨害された事件
男性従業員が、勤務する会社では、5年に一度リフレッシュ休暇という名称で、1週間有給休暇が取得できます。その同じ月に、通常の有給休暇の取得として、更に1日取得を申請したところ、上司や会社から妨害を受けた事件があります(神戸地裁平成23年10月6日判決、大阪高裁平成24年4月6日判決)。
有給休暇を取得できなかった
男性社員が会社の規定に従って、1週間のリフレッシュ休暇を申請したと同じ月に1日の通常の有給休暇申請したら、課長から、「そんなに休むと、上は不要な人間だと言うよ」「仕事が足りないなら、仕事をあげるから出社してくれ」と嫌味を言われて、取得を諦めました。
その翌日も、月1回の有給休暇を申請したところ、「会社の大事な行事がある」と課長から言われて、部長もそれに賛成したために、取得をあきらめました。
組合からのビラにも会社は苦言
男性従業員と組合は、会社に対して、これらの有給休暇取得の妨害は、パワハラであると、パワハラを訴えるビラを配布しました。
これに対して、課長は、ビラに対して苦言を呈した上で、男性従業員への年休拒否は、パワハラではないし、今後はよく考えてから取得するように、と発言をしました。
そのために、組合と男性従業員は、会社と課長らに対して、職場環境調整義務違反があったこと、パワハラ行為があったことを理由に、課長に100万円、会社や部長らには各50万円の損害賠償請求をしました。
第一審
第一審では、課長には年休取得妨害行為について不法行為と認め、課長と会社に対して連帯して40万円を支払うよう命じたが、部長や社長の行為への請求は却下されました。
控訴審
第一審を不服として、控訴されたところ、控訴審では、課長の発言の違法性が極めて高いと判断されて、損害賠償額は60万円まで引き上げられ、また、部長や社長の発言に対しても、それぞれ20万円の損害賠償に支払いを命じました。
また、会社に対しても、環境整備義務違反があるとして、20万円の損害賠償の支払いを命じました。
有給休暇取得は、従業員の権利であり、これを妨害することは、不法行為に該当します。会社も、従業員が、自由に有給休暇を取得できる環境を整える、管理職への研修制度を整えるなどの制度が必要です。
そもそも、ご相談のような事例が現代で発生したら、新聞などのメディアは大きく報じる気がしてならないようにも思える一方、古典的なハラスメントとしてとりあげられる事例ではあります。