事件の内容
有名旅館で、客室係として採用されていた女性が、発言が自己中心的であること、勤務態度が悪いことを理由に、洗い場に配置転換されました。
女性は、客室係で職務が特定されていたので、洗い場の仕事は拒否しましたが、旅館側は女性に客室係の仕事をさせないようにした結果、女性がノイローゼになり、自殺を図り、その後退職を余儀なくされらせました。
女性は、旅館に慰謝料370万円を請求した事件(神戸地裁平成14年10月31日判決)があります。
判決
結論として、女性の配置転換は、権利を乱用したとし、慰謝料100万円を認めました。
その理由は、女性は、客室係として勤務中、接客人数が通常より多い時に、補助を求めたことは、わがままとは決めきめつけられないこと、洗い場に配置転換しなければならないほど、洗い場の人数が不足していたことではないこと、客室係と洗い場の業務は明らかに業務内容や勤務形態が異なっていること、この配置転換により女性が客室係として失格という烙印を押されたかのようなこと、またそれによって精神的ショックをうけて、配置転換命令後、うつ状態になり自殺を図ったことなどの事情を総合的に判断されました。
配置転換の必要性
女性は、勤務態度から低い評価をうけていて、旅館からよくは思われていなかったとしても、女性の要望は特段無謀なことはなかったこと、旅館側もその要望を検討し受け入れる余地があったことを考えると、旅館側が女性に嫌がらせでの配置転換をしたとも捉えられる事件です。
職場に、評価の低い従業員がいる場合、雇用者は、仕事を取りあげるような措置ではなく、女性の要望を考慮し、能力を最大化できるかを考えることが重要でしょう。
解決に向けて
発言が自己中心的であることなどの評価はわかれるにせよ、洗い場への配置転換されました。
女性は、客室係で職務を全うするのに特定されていた女性に対し、配置転換をするにあたっては、会社側は合理的な理由を説明できなければなりません。
能力の最大化は、双方にとってメリットのあることです。対話もせずして一方的な配置転換は望ましくないことが理解できる判断ではないでしょうか。