妊娠中に軽い仕事に配置転換したために、手当ての支払いが減りました。これは男女差別ではないですか?

裁判事例

広島中央保健生協事件

妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格する措置は、原則として、男女雇用機会均等法9条3項が禁止する不利益取り扱いにあたり無効とされた事例があります。

広島中央保険請求事件という著名な事例です。

医療介護事業を営む協同組合が、病院など医療施設を運営していたところ、第2子を産んだタイミングで理学療法士として従事していた原告が、軽易業務への転換を請求したところ、副主任の地位を免じられてしまい、いままで副主任の職位にある者に対して与えられてきた手当月額9500円の支払いを受けられなくなったというものでした。

最高裁は、男女雇用機会均等法9条3項に定める妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いに該当するかの判断に、原則として禁止する扱いにあたると判断しています。

実はこの最高裁判例が出されるまでには、コナミデジタルエンタテインメント事件という著名な判例も存在し、争われてきました。

たとえば、コナミデジタルエンタテイメント事件は、被告の社員で,産休・育休後に復職したところ,担当職務を変更された上減給されるなどの不当な不利益を受けたと主張する原告が,被告に対し,一連の人事措置は妊娠・出産をして育児休業等を取得した女性に対する差別ないし偏見に基づくもので人事権の濫用に当たるほか,育介法5条,10条,22条,23条1項,均等法6条及び9条,民法90条等に違反する無効なものであると争っていました。 

話を戻すと、広島中央保健生協事件以降は、各種裁判例も、たとえば、TRUST事件では、妊娠が判明した労働者を墨出し等の現場業務から外し,派遣会社を紹介したうえ退職扱いした事例において、裁判所は退職合意の成立を否定し,賃金・慰謝料等の請求を一部認容しています。

他にも、社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会事件では、育児短時間勤務制度を利用して1日6時間の時短勤務を行った原告らが,被告が基本給を8分の6に減額することとは別に昇給号給数に8分の6を乗じて昇給を抑制する措置を取っていることが育介法23条の2等に反し違法・無効であるとして,給与の差額・慰謝料の支払等を求めた事案である。

本判決は育介法23条の2を強行規定と解し,時短勤務者の昇給抑制を違法として請求を一部認容しています。

このように、各種裁判例は、不利益扱いに対して極めて厳格な態度で臨んでいるものとみるべきです。手当の支払いの不支給は、違法となり、その分の請求権が維持できている可能性が高いことを指摘できるでしょう。


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