ご相談内容
夫と結婚後、私の両親と同居しています。
結婚して3年目くらいに、夫が仕事を失って次の仕事がなかなか見つからなくなった頃から、私に対して暴力を振るうようになりました。
それだけでなく、夫が、うちでダラダラとテレビを見ている時、私の両親が、多少小言を言ったことを理由に、両親に対しても物を投げたり、壁を叩いて、時には手をあげるようになってしまいました。
両親はもう年なので、抵抗することもできず、私は、このような生活に絶えられず、離婚に向けて対応中です。
私自身は、夫からの暴力を受けて、警察に相談して、裁判所に申し立てることによって、DV防止法において、夫に接近禁止令を出してくれそうです。
この場合、私だけでなく、両親に対しても、夫が近寄らないようにしたいのですが、親族にもDV防止法は適用されるのでしょうか。
DV防止法
DV防止法は、配偶者からの身体に対する暴力により、生命または身体に危害を及ぼすものを「配偶者からの暴力」と定義して、保護を行っています(DV防止法1条)。
ご相談者様も、夫の暴力に対して危険を感じていますので、DV防止法の保護対象者となります。それにより、都道府県の暴力相談センターで相談も受けることができ、その結果、住居を変更するなどの被害者の一時保護も可能です。
それに加えて、夫が妻に近づかないように、妻は、裁判所に「保護命令の申立て」をすることができ、その結果、裁判所は、夫に対して妻と一緒に暮らしている住居からの退去、つきまとい、徘徊など、近づかないように隔離する命令がだせます。
親族への暴力
以前は、配偶者の親族に対する、接近禁止命令は、DV保護法が「配偶者から暴力を受けている被害者」を保護する目的だったため、対象ではありませんでした。
しかし、例えば、妻が住居を隠して逃げているとき、夫が妻の両親など親族の自宅に押しかけて、妻を出せと、脅すために、妻も仕方なく夫と会う状況に追い込まれることもあり、平成19年度DV防止法が改正され、被害者への接近禁止命令をより確実にするという目的から、親族に対しても、一定の条件のもとで、接近禁止命令の対象とすることができるようになりました。
DV防止法の保護対象
親族がDV保護法の対象になるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
1.被害者の親族であること(親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の親族をさします
2.被害者への接近禁止令の申立てと同時、その審理中またはその発令後であること
3.被害者の当該親族の同意があること
これらの要件を満たす必要があります。
妻の両親もDV防止法の保護対象者になります
今回のご相談者様の場合、近くの地方裁判所に、接近禁止例を申し立てて、その対象者を、自分だけでなく両親に対しても、接近禁止令がでるようにして、両親も守ってあげることはあり得るのではないかと思います。
なお、接近禁止命令を発令してもらうには、それなりにハードルがあります。裁判所への手続が必要になるなど、心理的ハードルもあると思いますが、手段としては一つ身を守る方法のひとつです。