人事部のIさんは、社内でいじめにあったと主張してたGさんについて、何度か面談をしましたが、おとなしい印象のGさんからは具体的な話が聞けず、またその上司からも、過度な嫌がらせはなかったと聞いていました。
ある日、労働審判申立書を受け取りました。
解決にむけて
パワハラの事実関係の確認に関して、同僚からのヒアリングをするだけでは意味がありません。労働審判というのは、裁判所で行われる主に労働者が未払い賃金や、解雇の効力、パワハラなどを巡って争う手続です。原則は三回の期日で終わるものですが、逆にいうと、三回で終わってしまうので、先方の主張をしっかり把握しなければ、判断が示されてしまう危険がある手続なのです。多くの場合には、弁護士が選任され、主張と反論をしていくことになります。また、早期に解決することが前提とされている手続ですので、証拠なども早急に用意しなければなりません。一般論はこのくらいにして・・同僚は、その同僚をかばうかもしれませんし、嫌がらせのつもりはないなどと抗弁するのが当然だからです。しかし、これでは、事実があきらかになりません。同一部署内における社員の日報を確認する、社内メールなどを確認するなどして、Gさんに対する否定的評価が含まれたものはないか、確認していかなければなりません。Gさんにとっては、業務上の災害によってメンタルヘルスを害されてしまったのですから、私傷によるものとは考えられにくく、私傷による解雇などをするのであれば、解雇権濫用として判断され、雇用契約終了の効力は否定される可能性が高いでしょう。
会社の対応としては、嫌がらせをした同僚、上司に対して Gさんは、慰謝料請求するなどの余地がありましょうが、会社側としては、就労環境を害した事実を認め、配置転換、減給、降格などの処分が視野に入ります。会社側は、なにごともなかったかのうように今の職場環境を維持してしまうと、職場環境配慮義務違反が成立してしまう危険があるのです。