ご相談内容
会社で貸与されている携帯で、エッチな出会い系サイトに投稿したり、そこで知り合った女性と一日に何度もメールのやり取りをしました。
投稿やメールをするだけで、仕事に影響したことはなく、真面目に勤務していましたが、ある日私用メールや投稿が会社にバレてしましました。
会社では、投稿内容や頻度を調査して、会社の品位を落としている行為であると、懲戒解雇すると通達してきました。
私としては、仕事に支障がない範囲でのメールや投稿であり、解雇は無効であると思います。
学校私用メール解雇事件
福岡高裁平成17年9月14日の判決をご紹介いたします。
工業技術専門学校に、教師兼進路指導課長として勤務する男性が、業務用パソコンを使って、学外の女性とメールを交わし、多くの出会い系サイトに登録、そこで出会った女性とメールのやりとりをし、またSMパートナーの募集投稿をしました。
その件数は、男性のメールの送受信件数2980件のうち、出会い系サイト200件、学外女性とのメール700件ありました。
男性の勤務する学校法人は、男性に対して、自主退職を勧めたところ、男性は私用メールは認めたものの退職は拒否、その後、学校は男性に出勤停止措置をとり、懲戒委員会の合意のもと、男性を懲戒解雇しました。
男性は、それを不服として、解雇は無効であると争った事件です。
控訴審判決
第一審判決は、私用メールのやりとりは、業務に支障をきたしていないこと、生徒に悪影響を及ぼしていないことを理由に、学校の信用を著しく毀損したとは言えないとし、懲戒解雇は過酷であると判断していました。
しかし、控訴審では、会社から貸与されたパソコンでの私用メールの回数は膨大であり、その半数が業務時間内に出されていることは、職務の遂行に専念する義務に反していること、またそのメールのアドレスが、学校関係者であると推察できるもので、SM関係の女性に露骨に性的関係を求める内容であることから、学校の品位、対面、名誉を傷つけていること、男性は以前も減給処分を受けていて再度非違行為を行えば、処分されることはわかっていたこと
を理由に、解雇をやむを得ないこと、と判断しました。
行為の内容と解雇の重大さ
この事件では、懲戒解雇は、労働者にとって極めて重大な不利益があるもので、慎重に判断すべきであるとしているものの、その行為を総合的に判断しています。
業務用として貸与されているパソコンで、私用メールの件数が、許容限度を超えて、職務専念義務に違反しているか、私用メールの内容が学校の名誉を毀損したか、この内容が、懲戒解雇に値するレベルであったかがポイントです。
今回は、私用メールの膨大さ、期間の長さ、学校からの発信とわかるアドレスでの送信、性的な内容、教育者であるという立場と職務、注意されてからも反省がなかった、ことなどを勘案されて、解雇が相当とされました。
本件の解決に向けて
学校法人の裁判例をご紹介いたしましたが、すくなくとも会社で貸与されている携帯は、使用での利用の中でももっとも私的な領域に持続する事項、エッチな出会い系サイトに投稿したり、そこで知り合った女性と一日に何度もメールのやり取りをするために渡されたものではありません。
少なくとも投稿やメールをするだけで、仕事に影響したことはないとはいえこれが外部に流出などすると、会社の品位を落としている行為であると判断するのが合理的な可能性があります。
そこで、懲戒解雇するにあたっては、実際の業務にいかに悪影響が生じることなく、かつ、実際の業績が好調であったことをしめさなければらなりません。若干懲戒解雇まではいきすぎとも思われる事例ですから、争うのであれば会社と争う余地はあるのではないでしょうか。