内部告発
内部告発とは、組織(企業)内部の人間が、所属組織の不正や悪事(法令違反など)を、外部の監督機関(監督官庁など)や報道機関などへ知らせて周知を図る行為です。
組織の不祥事やその隠蔽は、この内部告発によって明らかになるケースが多いです。
内部告発の相手先は一般に次の3つに分けられます。
① 勤務先の会社
② 監督官庁などの行政機関
③ マスコミ・一般市民
内部告発による人事差別
富山県の貨物自動車運送事業の会社で、従業員が、会社の不正を社内外に告発したことを理由に、25年に渡り、配転・昇格が停止した事件があります(富山地裁平成17年2月23日判決)。
男性従業員は、勤務する運送会社でヤミカルテルが行われていることを知り、副社長に止めるよう進言したり、また、新聞社や監督官庁に通報しました。
会社は、男性従業員に退職を迫り、また教育研修所で雑務をあたえる、また男性の親族に従業員を退職させるよう圧力をかけました。
男性は、あくまでも退職を拒否し続けて25年にわたり勤務していましたが、その間、昇格・昇進が遅れ、精神的苦痛や経済的損失をうけたと、会社に対して、慰謝料1000万円、財産的損害3970万円を請求しました。
裁判所の判断
裁判所は、副社長への直訴という行動の唐突さ、報道期間への告発は会社に打撃を与える可能性があるため、男性従業員の社内での努力が不十分であったとはいえ、内部告発は不当とはいえず、保護に値すると判断しました。
男性が、長年昇進せず賃金格差が生じたことも、仕事ぶりから判断して、合理的に説明できない、研修所での雑務も人事権の裁量を超えている、と考えました。
そして、処遇で不利益を受けたことから慰謝料は200万円とし、また、男性と同期で入社した4分の3が退職しており、その中でも在籍している社員は高評価である、などを考慮して、賃金格差は、最も昇進の遅い社員の7割とみとめました。
さいごに
内部告発を理由に、25年に渡り従業員を差別待遇してきたことは、悪質性が高いと思われます。会社は、自ら行っているヤミカルテルという不正行為をしながら、それを直そうとする若い従業員の将来を潰しつづけるのであれば、それはゆるされません。