ご相談内容
第1子を出産し、2年間の休職をとったのですが、復職直前にまた第2子を妊娠しました。会社の規定によれば、継続して、また最大2年間の産前産後休職と育児休暇が取得できるので、合計4年間の休職を取得しました。
休職が終了して、職場に復帰したのですが、技術職ということもあり、資格試験の更新や技術試験などを受験したら、不合格になってしまいました。
それでも、勉強を継続しながら仕事を継続したかったのですが、再受験までに、上司から試験に不合格だと、復職ができないので、会社を辞めてほしいと言われました。
それでも、出社していると、「なぜやめないの?」「仕事ないよ」などと言われて、追い詰められています。
この嫌がらせが苦痛なので、慰謝料を請求したいのと、会社をやめる必要あるのでしょうか。
復職にあたって
長期間の休職後に、復職する場合、職務の内容によっては、復帰訓練や復帰試験を課す会社もあります。
なぜなら、例えばパイロットや人命を預かる仕事においては、常に高い専門性を保つ必要があるからです。
ご相談者様も、技術者ということで、会社では、能力が求められる職種であるとして、会社が期待するレベルにあるかどどうかを知るために、試験を実施すること事態には、問題はありません。
ただ、試験に合格しなかったとしても、再受験を実施する機会はあるのか、本当にその仕事にその能力が求められているか、他の社員も継続して同レベルであることを知るための試験があるのかも、公平に調べる必要が生じます。
他職種の可能性
復職後、休職前の仕事を継続してできない状況も多くあります。
能力だけでなく、子育てをしながらの勤務のために、時短勤務や残業しない職種に変更する場合もあります。
それらを踏まえて、たとえ、復帰訓練で不合格であっても、いきなり解雇ではなく、他の職種に異動して、再受験を検討していくなど、本人にとっていいキャリアを会社は一緒に考えていく必要があります。
嫌がらせの言葉
ご相談者様の場合、復帰試験に不合格した後に、上司から会社を辞めさせるための、嫌がらせの暴言を受けています。
この態様は明らかにパワハラであり、不法行為に相当すると考えられます。
他に、上司から、例えば長時間の面談を受けた、大声で罵倒された、周りの人に聞こえるような暴言で人格を否定された、などの状況があれば、それらもあわせて、慰謝料請求を行うことになりますので、それらに関する証拠類は、保存しておくことをおすすめします。
航空会社客室乗務員退職強要事件
ご相談者様と類似した事件に、大阪高裁平成13年3月14日判決の航空会社客室乗務員退職強要事件があります。
これは、18年間航空会社に客室乗務員として勤務していた女性が、通勤災害で4年間の休職をとり、休職中に、会社から呼び出されて、知識テストを受け、その結果、不合格となったために、上司から連日のように「能力・適正がない」「周りにとってお荷物」「寄生虫」「普通は辞表を出す」「制服を脱げ」などと退職を強要されました。
復職後も、復帰訓練を受けましたが、いずれも不合格となり、解雇通告が出された事件です。
大阪高裁では、会社の規模からみて、業種・職種を変更する措置や、教育を実施するなどが信義則上求められるというべきで、ただちに解雇することはできないこと、また上司から4ヶ月間に30数回も面談を行い、中には8時間にもわたるものがあり、机を叩いたり、家族にも退職要請を行い、このような行為はは社会通念許容する範囲を超えており、不法行為を構成するとしました。
実際には、女性がまだ退職していないことなども考慮されて、慰謝料50万円が相当であると判断されました。