損害賠償請求事件
女性従業員が、ワンマン経営者から再三罵倒され、退職強要を受けたために、女性従業員が、経営者と会社に対して、懲罰的慰謝料1200万円を含む総額1380円の損害賠償請求をした事件があります(東京地裁平成28年2月3日)。
比較的最近の事例ですから、検討をしてみましょう。
馬鹿かお前は
この事件は、中小企業に勤務する経理担当女性従業員が、社長から「馬鹿かお前は」「クビ」「代わりはいくらでもいる」「お前は親に目の前の石を拾ってもらって育った」などと再三罵倒され、退職強要されました。
それだけでなく、機嫌によって些細なことで長時間の叱責をうけたり、指示どうりの仕事をしても怒鳴りつけられたりもしました。
女性従業員は経理担当であるにも関わらず、経営者の個人的な振り込み、夕食の買い出しなどの雑用もさせられました。
経理担当者の職務とは大きく異なることは指摘しないといけません。
違法行為の強要
その上、社長は、女性従業員に対して、現金で商品券を購入させて、金券ショップで現金化するなどの資金洗浄や、売上金の水増しした報告書の作成を命じるという、違法行為も強要しました。
判決
裁判所の判断は、女性従業員に対する一連の行為のうち、業務外の行為や違法行為を命じるものは不法行為に該当するとし、その上で、罵倒や不当な叱責などもパワハラとして不法行為に該当するとし、経営者と会社に対して、それぞれ損害賠償責任があるとして、慰謝料110万円の支払いを命じました。
ただし、本判決では、損害賠償は、損害を金銭的に評価し、不法行為がなかった状態を回復させることを目的とするものであるとして、一般的予防を目的とした懲罰的損害賠償の請求に対しては、請求が認められなかったものでした。
どう評価するかの判断はありますが、慰謝料は認められました。