メンタルヘルス疾患を隠して採用されました

ご相談内容

以前勤務していた会社で、スキルが合わない仕事に配属されたことが理由で、メンタルヘルス疾患にかかりました。

その当時は、診療内科に通院しながら、休職を6ヶ月とりましたが、会社の定める休職期間が満了したためと、職場に復帰する気持ちがなくなっていたために、自己都合で退職しました。

1年ほどアルバイトをしながら生活していましたが、今回、全く違う職種の会社の正社員に応募したところ、採用が決まりました。

面接では、以前の会社での退職理由を、仕事があわなかったからと述べていて、心療内科に通院していたことは隠していました。

今の会社にこのことがバレたら、解雇させられてしまいますか。

仙台地方裁判所判決 昭和55年10月22日

メンタルヘルス疾患を偽って雇用されたことが事件になった裁判例があります。

福島市の職員の面接で、てんかん発作があるにもかかわらず、「ない」と偽って採用されましたが、懲戒解雇の理由にはならない、と判断されました。

これは、過去に、てんかんの症状があったとしても、その発作は軽度であり、現在はほとんど治癒しており、実際には、業務に影響もなかったという事実から、労働能力に及ぼす影響は少ないと、理由づけられています。

つまり、この判例に照らしていえば、ご相談者の場合も、メンタルヘルス疾患は完治しており、採用された会社での労働に影響がない場合には、それを隠していたとしても、「重大な詐称」にはあたらないでしょう。

「10代な詐称」にあたる場合としては、メンタルヘルス疾患が治っていないために、新しい仕事でも影響がでる、通常の仕事に耐えられないような場合は、詐称にあたります。しかし、それほどまでに、メンタルヘルス疾患が重い場合、面接で会社も気づくことができたとも言えます。

試用期間中の解雇

会社では、試用期間中は自由に解雇していいという風潮もありますが、そんなことはありません。

試用期間とは、本採用前に、その勤務状態により採用するかどうかを判断する期間のため、解約権留保付の労働契約が成立しています

ただし、解約権を留保しているからと言って、自由に解雇できるわけではありません。

「試用期間中の解雇は、解約権を留保している趣旨から、採用時にはわからなかったが、試用期間中の勤務状態から判断して、そのまま雇用することが適切でない、と判断することが、客観的に相当である場合にのみ許される」としています。

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