パワハラ態様と自殺との因果関係

不適切な行為

何度も不適切な行為をする社員に対して、上司が強く叱責し異動させた結果、社員が自殺に至った事件がありました(大津地判 平成30年5月24日 関西ケーズデンキ事件)。

この事件は、家電量販店での経験が20年ある、販売レジ担当の女性が、社員として規約に違反する行動を行っていたことが発端となっています。

女性は、値引き対象でない商品を勝手に値引きで販売、お客様の修理代金を建て替え払いして自ら配達しようとした、夫の会社に商品を値引き販売し、転売行為を手伝っていた、などという社内の規約や取り扱い禁止行為を繰り返していました。

上司の対応

上司は、部下の女性に対して、度重なる禁止行為に対して、下記のような対応をとってきました。

1.注意書を書かせた(注意書は、始末書や顛末書のようなレベルの性質ではない)
2.叱責した(上司が、注意したところ、女性が反省せず「売ってるからいいやん」と言ったため、声を荒げて叱責した)
3. 配置転換した(女性の行動が、社内規定を違反するので、販売レジ担当から、調査をする業務に異動させた。その結果、女性のシフトが希望通りに入らなくなった)

女性の自殺と裁判所への提訴

女性は、異動に不満をもち、上司との話し合いの翌日に、同僚にラインで「やめることにしました」とメッセージして、自宅で自殺しました。

これにより、女性の夫と子供が、上司と会社に対して、連帯して3500万円の損害賠償請求の訴訟を提訴しました。

判決のご紹介

大津地裁は、上司の対応のうち、

1の注意書を書かせたことは、業務上必要な範囲であり、パワハラ(業務の適正を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為)とは評価できない

2の叱責は、上司が何度も注意しているにも関わらず、女性が「売ってるからいいやん」と反論したために、感情を抑えきれず叱責したにすぎず、その叱責の内容自体も、不合理なものではない、業務の適正な範囲を超えてない

3の配置転換は、業務の適正な範囲を超えた過重なものであって、強い精神的苦痛を与える業務に従事させ、不法行為に該当するが、
シフト変更は業務上必要なものであり、希望に反するシフト変更はパワハラの一貫であったとは考えにくい
と判断しました。

相当因果関係

パワハラと自殺との相当因果関係については、上記の配置転換はパワハラと認められるが、退職をせずいきなり自殺に至ることは通常想定できず、予見可能性がないので、配置転換と自殺との間には相当因果関係は認められないとしました。

また、会社は、パワハラ防止研修を行い、人事部と労働組合に相談窓口を起き、啓蒙活動や注意を行っていたため、会社において、職場環境配置義務違反を認めることはできないと判断しました。

従って、上司と会社に対して連帯して、慰謝料110万円の支払いを命じました。

自殺という重大な結果との関係では極めて低額に感じるかもしれません。とはいえ、各種行為と自殺との因果関係を丁寧に見ている点では重要な判断なのでないでしょうか。

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