パワハラを受けて鬱状態から自殺に追い込まれた事例

加野青果事件

この事件は、女性先輩従業員AとBが女性若手従業員に対してパワハラを行ったことにより、若手従業員がうつ状態になり、会社も防止策を講じなかったために、自殺に至った事例です。

女性の両親が、先輩女性従業員と会社に対して、いじめ・パワハラが原因で自殺したとして、損害賠償の訴えを提起しました。

最終的には、名古屋高等裁判所で、女性従業員Aに対して慰謝料55万円、CBに対して慰謝料110万円、会社に対して5460万円の支払いを命じました

事件の概要


女性が、高校を卒業して正社員として、会社に入社し、経理事務を3年行い、その後営業事務に転換しました。女性は、入社同時から事務のミスが多く、女性の先輩従業員Aは、女性のミスがあるたびに、計算室に呼び出して「何度言ったらわかるの」と何度も強い口調で注意・叱責を長い時間繰り返しました。

また、異なる女性の先輩従業員Bは、女性がミスをすると、「てめえ」「あんた、同じミスばっかりして」と厳しい口調で何度も注意・叱責を行いました

女性の親が心配して、会社を訪れると、「親に出てきてもらうくらいなら、社会人としての自覚をもって自分自身もミスのないようにしっかりしてほしいと」と伝えていました。

その後も、女性がミスをする度、AとBは、計算室で一緒び叱責を行うこともあり、

女性は、食欲不振、疲労感、興味の喪失が見られるようになり、身なりにも構わなくなり、季節と反する服装で出社する状況で、他の従業員と会話することもできなくなってきました。

その結果、営業事務に配置転換されて2ヶ月後に、自殺により死亡しました。

遺族の訴え

女性の両親が、AとBと、これらのパワハラを放置し、また女性に対してより過酷な配置転換を行ったことにより、女性がうつ状態から自殺に至ったとして、損害賠償として、AとBと会社に対して、連帯して合計6400万円の損害賠償を請求しました。

判決

原審では、AとBの行動は、うつ病を発症するほどの心理負荷ではなかったとして、会社もその対応をとらなかったことと自殺との因果関係を認めず、精神的苦痛による慰謝料150万円だけを認めました。

しかし、これに対し、高裁では、女性のうつ病からの自殺に対して、会社は自殺を予見できたとして、AとBの損害賠償責任に対して連帯責任を負うほか、会社固有の損害賠償責任として、合計5460円(逸失利益3550万円、死亡慰謝料2000万円、葬祭代150万円、親固有の慰謝料200万円など)の支払いを命じました。

パワハラと会社との連帯責任

AとBの叱責行為は、不法行為として慰謝料請求が認められましたが、AとBには、自殺の予見可能性はなかったとしました。

しかし、会社は、AとBの叱責を制止せず、放置したこと、また配置転換後も女性の業務内容を見直しを検討しなかったことも、これを不法行為責任があり、会社には自殺予見可能性もあったとして、因果関係を認めています

大きい請求が承認されていますが、それだけ、パワハラは厳罰化されているとも評し得るのではないでしょうか。

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