事件の内容
引っ越し会社に勤務する男性責任者が、下請け会社社員とともに、引っ越し先のお客様の自宅で、引っ越し作業をした際に、財布らしき物を移動させたことが原因で、引っ越し作業が終わったあと、客先から財布が紛失したと連絡を受けました。
連絡を受けた、引っ越し会社の事務所責任者は、「財布が盗まれた」というクレームを受けて、気持ちが動転し、当日引っ越し作業をした人を集めて、所持品検査を実施しました。
引っ越しの責任者は、財布を盗んだという疑いをかけられて、所持品検査だけでなく、服の上から身体を撫でて財布がないかを確認され、身体検査を受けました。
後日、お客様からは、財布が見つかったとの連絡を受けたものの、男性は、行き過ぎた身体検査により、人権を侵害されたと、事務所責任者に対して、慰謝料500万円を請求しました。
判決
使用者が従業員に対して、所持品検査や身体検査は、調べられる人の人権侵害を伴います。
例外として、高額な商品や個人情報を含む機器を取り扱っている企業が、就業規則などによって、必要かつ効果的な合法的な理由に基づいて実施されなければならない場合です。
被告においては、引っ越し作業員の所持品検査を許容する就業規則等は存在しないため、この所持品検査や身体検査は、違法となります。
男性は、身体検査を明らかに拒否はしなかったものの、翌日同僚に怒りをぶつけたことから、この検査に同意したとは思えません。
また、この所持品検査をすることにより、窃盗の疑いをかけられたとの印象から、社会的信用を低下させていることが明らかです。従って、従来社内で受けていた評価、所持品検査、身体検査の目的、やり方を考慮して、慰謝料として30万円が相当であると判断しました。
所持品検査
企業は、身体検査をすることは、窃盗の疑いをかけられ、自分の意思に反して、身体を触れれること自体が、検査される人の人権侵害にあたる可能性が高いことを十分に理解しなければなりません。
実施するための、規則、やり方、説明などが必要です。お客様からの窃盗のクレームを受けて、企業も動揺するかもしれまんが、所持品検査や身体検査は、従業員のプライバシー権などセンシティブな問題に関わりますので、慎重に対応してください。