弁護士ができること
いじめについての学校との交渉
いじめ防止対策推進法は、23条において、学校を名宛人としていじめが生じた場合における措置をさまざま定めています。被害児童や加害児童への指導を求めること、加害児童の保護者に助言をする義務を有すること、安心して教育を受けられるよう措置を講ずる義務を有すること、いじめに関する情報を保護者と共有するための措置を講ずること、警察との連携を図ること、これら義務を定めています。また、学校は、同法25条において、いじめを行なっている児童に対しては、懲戒権を行使すべきことを定めていますが、学校教育法11条に基づく懲戒権の行使を定めているので、体罰を加えることができないと明確に謳われています。懲戒とは主に、注意、叱責、居残り、別室指導、起立、宿題、清掃、学校当番の割り当て、文書指導などが考えられますが、これらは時代の変遷によって変化するとも見るべきです。ただし、注意しなければならないのは、学校教育法11条は、規則を遵守すべきことを定めているので、学校教育法施行規則26条1項により、懲戒を行うにあたっては教育上必要な配慮をしなければならないと定めています。上記義務の履行を求めて、弁護士は、学校側と交渉をすることは可能でしょう。
調停の申し立て
話し合いがうまくいかない場合、裁判所を通じての話し合いの余地があるでしょう。裁判所を通じて、期日を定め、非公開の手続において双方の言い分を聞いてもらう手続があります。ここで調停条項といって、双方にルール作りが整うと、場合によっては強制通用力を有する性質の権利義務関係が発生します。非公開の手続ですので、主に加害児童と被害児童との間の暴力事件など、公開の場で明らかにすることが適切ではないと見られる場合には、調停での話し合いが適していると思います。実は、この方法は、謝罪を求めることを真意として申し立ても可能です。実際のところは、証拠がなくて訴訟提起してもあまり効果がないと考えられる場合にも、調停の申し立ての選択肢を取ることも考えられます。
訴訟
相手方との話し合いが不能であれば、訴訟を起こす可能性が生じてきます。民法709条に基づく不法行為の成立を主張する、714条に基づく監督責任の成立を主張して損害賠償請求訴訟を提起する方法がありえます。ただし、学校側を相手方とする場合には、在学契約関係に基づく安全配慮義務違反を原因とする債務不履行責任を追及することも考えられ、民事事件にすることが考えられますが、相手方が国公立の場合には国家賠償請求などになりえます。ここでの問題点は、証拠にもどつく主張・立証責任は基本的に原告側が負担することになることです。メリットとしては、調停などの合意を目指していく手続とは異なり、判決の形で裁判官から強制的に判断が示されることです。
刑事告訴
加害者に暴行罪・傷害罪などが成立する場合には、刑事事件にすルコとも視野に入ります。被害届を出す、刑事告訴をする方法はありえますが、これは国家による刑罰権の発動を求める手段ですので、話し合いなどの建設的な方法とは言い難い面が強いのが実情です。なお、年齢によっては少年事件として処理されることになり、少年審判などで解決することもありえます