事件の概要
化粧品会社に勤務する女性社員らが、売り上げで目標達成しなかったことを理由に、上司から呼び出されて、4名が罰ゲームとして用意していた、ウサギの耳がついたコスチュームを着用させられた事件があります(大分地裁平成25年2月20日)。
女性らの訴え
この事件は、化粧品会社の物販コンクールで、商品の販売数が目標数に達しなかった4名に対して、罰ゲームを行うことが決定されました。
平成21年10月に実施された会社の研修会にて、上司は、4名に対して、着用に関する意思確認はないまま、用意していたコスチュームを4名に着用させ、そのコスチュームはウサギの耳と、上半身は白い襦袢の上に紫の小袖と光沢のある青色の上着、下半身は光沢のある黄色の袴でした。
研修会の当日、終日着用させられ、写真も撮影された上に、その写真を別の研修会で投影されたことにより、女性はショックでクリニックへの通院、休暇、欠勤を経て、雇用期間が終了するに至りました。
その後、女性は、会社と上司に対して、319万円の損害賠償請求を求めました。
上司と会社の言い分
会社は、男性社員らに対しての、減給処分、転勤、降格をなどの処分は実施しました。
コスチュームの着用に関しては、レクレーションの盛り上げ策であり目的には問題ないとし、また、女性らは、コスチュームの着用を明示的に拒否しなかったと主張しました。
損害について
判決では、女性らがたとえ任意であったとしても、売り上げ未達成の罰ゲームとして、コスチュームの着用を拒否するのは困難な状況であり、しかも、コスチュームの着用も研修内容とは全く関係がなく、しかも撮影された写真が別の研修会で使用されるなど、目的と手段が一致していないと指摘されました。
したがって、研修会は1日であり、女性らが着用を拒否しなかったこと、目的が正当であったとしても、この命令は社会通念上正当な職務行為であるとはいえず、女性らに心理的負担を過度に負わせる行為であったことは、明確であるとして、不法行為と認め、慰謝料20万円の支払いを命じました。
セクハラ行為に対しては明白に拒否
セクハラと思われる行為を受けた場合は、被害者は明確に「いやだ」という気持ちを伝えることが重要です。とりわけ、それが難しいのはよくわかるのですが、それでもあいまいな態度だと、加害者である相手にも伝わらず、セクハラ行為の認定の際にも、「拒否したか」ということが問われることになります。