事件の概要
東京地裁平成4年6月11日判決によれば、私立学校法人で勤務する女性教諭は、2年間に2回、それぞれ3ヶ月ぼ産前産後休業をとり、第2子の産休明けに、学校に出勤すると、校長から「腰の低さがかけている」「公立の先生でも同じ学校で2度は産休を取らない」などと言われ、その後も執拗な嫌がらせが10年に渡って続きました。
子供の病気で学校を休むと始末書の提出を求められましたが、これを拒否すると、退職勧告を受けました。
これも拒否したところ、授業や担任から外されて、一人別室で閉じ込められて隔離され、最後には自宅研修を命じられ、合計10年間に渡って、教職から外されてしまいました。
女性教諭は、これらの一連の行為は、不当労働行為にあたるとして、学校法人に対して慰謝料1000万円を請求しました。
判決要旨
女性教諭が取得した産休は、2年間に2回、各3ヶ月間であり、当時の労働基準法の規定である産前産後休業各6週間からすると、法定どうりの取得です。
それに対し、校長が、長期間にわたり、一切の仕事を与えず、別室にとどまらせる行為は、教員である女性にとって、生徒の指導・教育という本来の労務とは、異なります。
また、別室に隔離することによって、学校が組合結成を嫌った嫌がせらせ行為であると推認されます。従って、この隔離は違法といわざるを得ないと判断しました。
その上、別室での隔離、自宅勤務を命じられた行為は、甚大な精神的苦痛を与えたとして、慰謝料として600万円(控訴前は400万円)が相当であるとしました。
産休への理解
この事件は、明らかに、校長が産休を権利として理解してなかったことが、伺われます。
また、教育現場で、生徒に対しても、一人の教諭を執拗に排除する行為は決して、教育上好ましい行為ではありません。