ご相談内容
勤続6年目の女性社員が妊娠したと報告がありました。
本人は、出産後、半年間の休職を希望しており、その後復職する意思があります。会社としても、優秀な社員なので、復職は問題ありません。
ただ、半年後の復職時に、本人の希望する部署に配属できるのか、本人が軽微な仕事を希望したらどうなるのか、など、今後どんなことに配慮していけばよいでしょうか。
マタニティー・ハラスメント
マタハラとは、職場において、社員が妊娠、出産にまつわる、嫌がらせをうけることを意味しています。
出産後、会社に戻ってこなくていいと言われる、降格される、出張ができないなら異動してもらう、遠回しに退職を促す、短時間勤務を希望しても受け入れない、などのさまざまな行為があります。
マタハラを受けたことで、ストレスから流産した、体調を崩した、メンタルに問題がでた、などの問題も出てきています。女性にとって、妊娠、出産は人生の大切な時期です。会社も、重要な戦力である女性が働きやすい環境を整えていくことが大切です。
マタハラの指針
平成26年に、最高裁で、「妊娠をきっかけとする降格は男女雇用機会均等法違反」とした、マタハラの指針となるべく、判断がでています。
これは、会社に妊娠を告げた女性社員が、負担の軽い仕事への異動を希望したとたん、会社は女性社員を降格させました。
女性はこれを不服として、会社に対して損害賠償請求を起こしましたが、第一審、第二審では、女性が降格に同意したという理由で、訴えがは棄却されていましたが、最高裁の判断では「降格について、妊娠した女性の明確な同意や事業主に特段の事情がない限りは違法になる」として、この降格人事が違法であると、女性は逆転勝訴しました。
勤務先には、175万円の賠償を払うことが命じられました。この判決は、マタハラに対する重要な指針になります。
事業主は、妊娠した女性社員に対して、今後の働き方を十分に話し合う必要があり、妊娠中や復職後も、育児をしながら、働きやすい労働環境を整える必要があります。
女性の活躍する会社とは
妊娠・出産について、会社のガイドラインや方針が整っている会社は、企業イメージもあがります。
優秀な人材採用にもつながり、少子高齢化が進む日本においては、男女が協力して育児や介護をしながら働く会社であることは、社会的な信用も築けることになるでしょう。
実際、弁護士の視点で見ていますと、女性に活躍の機会を適切に与えられている会社は、やはり健全な運営ができているように見えます。