ご相談内容
人材派遣会社で、総務兼人事をやっています。
先日、会社の社員から、残業代金が未払いであると連絡があったため、経理部門と一緒に調査をしていました。
ところが、再度同じ社員から、残業代を支払わないのは会社として問題だから、この事実を労働基準監督署に訴えたと言い出し、驚きました。
会社としては、経理や勤務時間の計算で間違いがなかったか、前向きに調べてはいますが、労働基準監督署から、残業代を支払えなどと通達や、会社が訴えられたりするのでしょうか。
ご回答
社員が労働基準監督署に訴えたと聞いて、驚く人も多いかと思います。
しかし、労働基準監督署は、労働基準法などの行政法が守られているかどうかを監督する役割であり、例えば、解雇を無効にしろ、や、残業代を支払えなどの、強制力はありません。
労働基準監督署を用いる方法
労働基準監督署は、「労働基準法」を遵守しない使用者に対して、行政指導を行ったり、あまりに悪質な行為があった場合は、使用者を、検察庁に送検するなどの権限があります。
労働者は、社内で労働上の問題に直面した場合、会社に申し出てもなかなか対応がなされない場合に、次に、労働基準監督署に駆け込むことも選択の一つです。
しかし、労働基準監督署が、会社の対応について、例えば、解雇が無効である、などと決めることはできません。
不当な解雇があった場合は、それは「労働契約法」に関わる問題ですので、それらの法律問題を扱うのは裁判所です。
従って、労働契約に関する問題は裁判所が扱い、賃金未払い、解雇予告など、労働法に関わる規制がある場合には、労働基準監督署が行政指導をします。
賃金未払い
今回のご相談者の場合、賃金の未払いがあった場合、社員が労働基準監督署に相談に言ったとしても、労働基準監督署は会社に対して、残業代の未払いを命ずることはできません。
内閣衆質176第103号 平成22年11月9日に、労働基準監督機関の役割に関する質問に対して、「現在、労働基準監督署が、労働基準法上、同法に違反して支払われていない賃金の支払いを命ずる権限を有していないことは、昭和62年当時と同様である」と回答しています。
つまり、賃金の未払いがあった場合に、裁判所のみが、労働時間と未払金を認定してから、支払いを命ずることができるのです。