性同一性障害
性同一性障害とは、性別違和や性別不合とも呼ばれ、『出生時に割り当てられた性別とは異なる性の自己意識(性同一性)を持ち、自らの身体的性別に持続的な違和感を覚える状態』をいう医学的な診断名および状態像をいいます。
最近は、性同一性障害であっても、海外の動きもあって、日本でも、マイノリティとして隠すことなく公開して、社会に受け入れられている例も見られてきています。
女性の容姿で出社したい
性同一性障害者解雇仮処分申立事件(東京地裁平成14年6月20日の裁判例)が、女性の容姿で出勤したい男性が解雇を不服として、権利確認した請求事件があります。
これは、性同一性障害の診断をうけた男性が、会社に対して
1.女性の服装で出社したいこと
2.女性用トイレと女性用更衣室を使用したいこと
を会社に申し出たところ、会社ではこれを拒否しました。
一度は、会社は謝罪文をだしたものの、男性が女性の服装と化粧をして配属先の席に着くと、会社は男性に対して、自宅待機命令を出しました。
その後、会社は、男性に対して、社内の風紀を乱すために、女性の容姿で出社するならば解雇すると通知しましたが、男性は、これを拒否し、裁判所に対して、解雇通知書の無効と、雇用契約上の権利の確認、賃金の支払いを請求しました。
裁判所の判断
会社側が、今まで男性の服装をしていた人が、突然女性の容姿で出社したことで、社員の多くがこれにショックを受けて、強い違和感を抱いたことで、社員や取引先の相当数が嫌悪感を抱く恐れがあることが認められるため、男性に対して、社内外の影響、当面の混乱を避けるために、女性の容姿で出社しないことをもとめた事自体には、一応理由があるとしています。
しかし、男性は、女性の容姿で出社したいと申し出た時点では、性同一性障害として診断をうけており、他社から男性としての行動を要求されることに、精神的苦痛を受けている状態でした。
裁判所は、双方の事情を踏まえて適切な配慮をしたとしても、女性の容姿をした男性社員を就労させることが、企業秩序または業務遂行において、著しく支障をきたすと認めるに足る疎明はない、と判断し、懲戒解雇に相当するまで重大かつ悪質な企業秩序違反と認めることはできないとしました。
さいごに
裁判所も判断に苦慮した状況が伺われますが、結論としては、懲戒解雇に相当するほど悪質ではないとしています。
この結論自体は、相当と思われますが、会社としても、社内外の影響を最小にしたいことを考えて、当事者間で、早めに障害について話し合い、勤務場所や形態について相談していくことが大切です。まずは、早期に会社と話し合いをすべきでしょう。