ご相談内容
夫婦共働きで、お互い協力して、子育てしながら働いています。
先日、夫の会社から、会社から2時間以上離れた事業所に転勤命令が出ました。業務上は、必要な転勤ですが、夫が単身赴任または遠距離通勤になると、子育ての協力も難しくなり、私(妻)も仕事を続けることができません。
夫の転勤命令を無効にできないでしょうか。
ご回答
問題点
子育て中の労働者が勤務を継続していく場合には、雇用先から転勤命令ないし配転命令が出されるに伴い、転居を余儀なくされ、通勤時間が延びること、また、なにより子との時間が減らされることを意味します。
これは、健全なワークライフバランスを得たうえでの勤務・労働を行ったうえで、ひいては会社全体の利益が失われることも十分考えられるでしょう。
一方で、会社は業務の必要性や他の従業員・勤務者との公平をも考慮したうえで判断している可能性もあるのですから、どの程度まで一従業員の子育ての事情について考慮対象となるのかが争点になるのです。
有名な最高裁判例を紹介します。
ケンウッド事件(最判平成12年1月28日判時1476号153頁)では、目黒の事務所勤務から八王子事務所への転勤を命じられた34歳の女性のケースで、異動命令に従わず、八王子に勤務をしなかったものがあります。
このケースでは、人選基準を設けていたこと、早急に従業員の補充を行う必要があったことが認められ、不当な動機・目的による発令ではないと判断されました。
しかし、仮にこのような必要性がなく、不公正な人選基準によるものである場合には、別の結論に至ることも十分あり得るのです。