東京地裁平成30年3月29日
要旨
管理職がセクハラを行い、会社の組合が、会社側に対して対応を求めたところ、会社側はセクハラに当たらないと回答を出したことを受けて、組合はウエブサイトに「セクハラ発覚」「会社隠蔽」と出した。会社は、名誉棄損みあたると損害賠償請求したが、棄却された。
セクハラの内容
自社の製品を代理店を通じて販売する会社の営業本部長である管理職が、夕食の帰り道、路上で、代理店の女性の肩を抱く行為をした。女性は、その場で行為を拒否はしなかったが、その行動が会社の組合に伝わった。
その後、組合は、会社と管理職に対して、セクハラ行為についての対応を求めたが、会社と管理職は、この行為はセクハラに当たらないと回答して、組合との話し合いを打ち切った。
セクハラ行為をウエブで告発
話し合いが打ち切られた組合は、ウエブサイトで、「営業本部長のセクハラ発覚」と「会社隠蔽」と見出しに書き、セクハラ行為を行為を告発した。同時に、組合の委員長が、会社の株主総会で、本件を質問などした。
会社と営業本部長は、組合を相手に、このウエブサイトの見出しは、会社の名誉を既存したとして、組合と組合の委員長にそれぞれ、500万円の慰謝料請求の訴えをおこした。
裁判例
「営業本部長のセクハラ発覚」と「会社隠蔽」との見出しは、実名はなくても、営業本部長を特定でき、社会的評価を落とし、また会社がセクハラ行為を隠しているとの印象をあたえ、会社の名誉を既存している、ということを認めてはいる。
しかし、この記載は事実であり、事実のウエブサイトへの記載は、通常の組合活動として、社会通念上許容される範囲であるとして、この請求を棄却している。
本件の組合の活動は、少なくとも事業者どおしの任意団体としては、適切な業務の範囲内であるといえましょうが、これが、文言がより過激なものになるケースなどでは、一概に言えないとは指摘できましょう。