事件の内容
20代の女性が、上司である40代男性社員からストーカー行為を受けて、退職に至ったため、判決では、男性上司と会社に対して、総額700万円の損害賠償を命じた事件があります(東京地裁平成15年6月9日)。
好きだとストーカー行為
40代男性部長が、部下である20代女性社員に対して「貴女の笑顔が僕を元気にする。元美少年より」というラブレターを送ったり、宿泊を伴う出張時には、特別な感情があると告白したり、女性社員が入院した時には毎日一人でお見舞いにいくなど、女性が断っているにもかかわらず、過剰なつきまといをしました。
最後には結婚を申し込んだため、女性社員は精神的に追い込まれて、1ヶ月間の会社の休職を余儀なくされました。
会社で、女性を盗撮
女性の復職後、男性部長さらにエスカレートしたストーカー行為が続き、隠れて、臀部、腹部、上腕部、脇の下周辺、大腿部、股間などを盗撮しました。
それを知った女性は、ショックのあまり欠勤し、ついには退職を決意するに至りました。
損害賠償請求
女性は、男性部長と会社に対して、拒否しているにも関わらず、好きだとつきまとったこと、体の各部位をズームアップして写真を撮った行為は、不法行為であり、会社の就業環境を著しく悪化させるとして、訴えました。
男性社員は、社員は興味本意で撮影しただけで、性的興味とは無関係であり、洋服の上からの社員で、問題はないこと、また女性社員は「平気で嘘八百を並べて偽証する」などどと、反省の色が全くありませんでした。
判決では、体の部位をズームアップして盗撮する行為は、女性に対して、恥辱感、屈辱感を与えるものであること、裁判でも女性に対して、侮辱する発言をしていることも加味して、男性社員と会社に対して、総額700万円の慰謝料である損害賠償を命じる、セクハラとしては異例の高額の損害賠償が認められることとなりました。
隠し撮りもセクハラ行為
セクハラとは、性的発言、性的関係の強要、体への接触などが一般的ですが、直接関係がなくても、トイレや更衣室の覗きや今回のような隠し撮りも、セクハラ行為になります。
会社は、自らが使用者責任といって不法行為責任追及をうけてしまうおそれがあるのですから、このような相談を受けた場合には必ず、早期解決を心掛けるべきでしょう。