事件の内容
大分地裁において出された、平成14年11月14日判決があります。
有限会社に勤務する女性が、入社してすぐから、社長から週3〜4回誘われて飲食をともにして、その都度、「ホテルに行こう」「触らせろ」などど言われて、抱きつかれたり、股間に手を入れられたりしました。
このような行為は2年近く続き、その後更にエスカレートしてきて、勤務時間中にも、社長は女性に抱きついたり、キスしたり、床に押し倒して胸や股間を触ったりしました。
激しいセクハラ行為が続いたため、女性はついに、厳しい態度に転じて、職場で反抗的な態度を示し始めたところ、社長から、女性が協調性に欠ける、事務所運営に支障があるとして、女性を解雇しました。
女性はこれを不服として、社長に対して、慰謝料660万円を請求しました。
要旨
社長は、もし女性が嫌がっていたならば、入社して2年間も、週3〜4日も飲食を共にすることはなかったはずなので、セクハラ行為ではないと主張しました。
しかし、ポイントは、女性は解雇される前から、社長からセクハラ行為を受けていることを公的機関に相談していました。
つまり、女性は嫌がっていて、精神的苦痛を受けていたことを証明します。
また、小さな会社では、社長の影響力は大きく、もし食事を断り関係を悪くしてしまうことを恐れていたために、本人に強く拒否できなかったことも、仕方ないと言えます。
今回の解雇は、セクハラ行為がひどくなった社長に対して、女性が拒絶し、社内で反抗的な態度をとったとしても、これまでのセクハラ行為を考えれば、多少の行き過ぎがあっても、やむおえないとしています。
よって、本件解雇は、解雇理由がない不法行為上の違法性のある行為として認められ、社長は、損害賠償責任を負う、としました。金額は、セクハラの態様、長期間であることを、その他の経緯を考慮して、慰謝料200万円を相当としました。
セクハラ行為への態度
職場でセクハラ行為を受けた場合、職場環境の悪化や、自分の評価が悪くなることを考えて、強く拒否できないことも多くあります。
とくに、小規模な会社では、上司の力が大きいため、食事に誘われても断れないでしょう。ただ、この曖昧な態度が、セクハラを行う相手を助長させて、ますますセクハラ行為は悪化することが考えられます。
相手に直接拒否した態度がとれない、職場内で相談することができない、場合でも、公的機関や外部の弁護士やクリニックや相談センターなどに、相談をしてみることが大切です。
そこで解決できることもありますし、また、すぐに解決につながらない場合でも、今回の事件のように、後から、この相談していたことが、セクハラ行為を嫌がっていた、拒否したかったことを証明することもあります。
セクハラは、そもそも感じ方の問題をどこまで法律で拾うことができるのか、難しい一方、被害者が理不尽な扱いを受けることも多い問題なのです。