方策とそのメリット・デメリット
弁護士は、セクハラ被害者に遭われた方の状況をよく考慮して、もっともプラスになる方策はなにか、目の前の依頼者の状況を聞いて判断します。しかし、どんな要素を用いて判断しているのか、これはプロの仕事のゆえに暗黙知が多いことも事実です。暗黙知を明文化してみます。
直接交渉
内容証明郵便を出すなどして、直接加害者や企業と交渉する
メリット:秘密保持可能、短期で解決できる可能性がある
デメリット:合意が必要。加害者に社会的制裁は加えられない。着地ができるかどうかが不確実
調停・仲介・あっせん
裁判所、弁護士会の仲裁センター、労政事務所
メリット:非公開。費用が安い。短期で解決できる可能性がある。第三者が入ることにより、直接交渉より合意が得やすい。
デメリット:合意が必要。不成立の場合時間の無駄。消極的な場合がある。強制量が働かない。
労働基準監督署の指導・勧告
労働基準法違反があれば、労働基準監督署から指導がはいる
デメリット:違反が必要
均等法上の措置
17条による労働局長の助言・指導・勧告
18条による紛争調整委員会の調停
30条による労働大臣による企業名公表
メリット:会社については影響力がある
デメリット:労働局が消極的な場合がある
労働組合への相談
労働組合を通じて会社と交渉する
メリット:秘密保持はやや。セクハラに熱心な組合のときは効果ある
訴訟
不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟、解雇無効確認訴訟、地位確認訴訟、賃金支払い請求訴訟、懲戒処分無効確認訴訟
メリット:強制力があり、加害者への影響大。公の場での判断
デメリット:費用と時間がかかる、本人尋問の場合負担あり,証拠が必要となる
仮処分
セクハラ行為に対する差し押さえ仮処分、地位保全、賃金仮払い処分、解雇禁止処分など
メリット:裁判所の助言で和解しやすい
デメリット:必要性・緊急性が条件
労働審判
メリット:迅速(原則三回以内)。調停や判決より柔軟な審判
デメリット:複雑な事案には不向き。当事者からの異議申し立てにより訴訟に移行する