ご相談内容
会社で社長と2人で残業していたとき、突然後ろから抱きつかれました。ホテルに行こうと誘われましたが、怖くてその場を逃げ出してしまいました。
翌日、恐る恐る出社すると、社長は何もなかったかのように、話しかけてきます。
その日以来、仕事をしていても、事務所に社長がいるか、夜残業してて社長と2人きりにならないか、ビクビクして過ごし、毎日気になりすぎて、毎朝出社すると頭痛がするようになりました。
あまりに、心理的苦痛がひどくて、診療内科にも通院を初めてもよくなならず、結局会社を自ら退職することになりました。
会社を辞めてしばらくして、気持ちが落ち着いてきたのですが、よく考えると、全ての原因は社長にあり、どうしても許せません。家族と相談して、民事調停を申し立てることにしたのですが、セクハラの慰謝料は、いくらくらいと請求したらよいでしょうか。
損害賠償請求に対する逸失利益
セクハラのみならず、様々なハラスメントを受けた被害者が、加害者に対して、慰謝料を請求することができます。
これは、不法行為に基づく損害賠償請求、つまり「加害者の不法行為を原因として、被害者が経済的・精神的損害を被ったために、その損害を回復する」ための請求です。
経済的損害賠償請求
被害者が受けた損害は、大きくわけて、経済的損害と精神的損害の2種類にわけられます。
経済的損害は、すでに発生した損害とこれから発生するだろう損害に分けることができます。
すでに発生した損害とは、例えば、この不法行為によって、病院に通った場合は治療費や薬代、またその間会社を休まざるを得なかった場合、そこで払われるべき給料などです。
これから発生するだろう損害とは、例えば、病気や怪我、精神的苦痛から、働くことができなくなり、これから稼ぐことができたであろう金額分、本来であれば仕事をして収入を得ただろう金額の事をです。これを「逸失利益」と言い、この逸失利益も請求することができます。
精神的損害賠償請求
精神的損害とは、精神的苦痛に対して支払われるものです。
交通事故の場合は、事故で負った怪我による程度で慰謝料の相場が決められています。セクハラやパワハラによって通院した場合も、交通事故による入院や通院の基準も参考になるかもしれません。ただし、交通事故は、わざとではないのに対して、セクハラ・パワハラは、わざと行っているものなので、それより高い慰謝料を請求することも多くあります。
また、病院に通院しなくても、相手の行為によって、精神的苦痛が生じて、それが相当なものであれば、請求が可能です。
一般的な金額ですが、慰謝料が200万円を超えることは稀であり、通常20万円から100万円ということが多いようです。
慰謝料の決定
慰謝料は、被害者側と加害者側の事情、態様により、ケースバイケースで決められます。具体的には、経緯をすべて勘案されることになりますが、要素をピックアップしてみると以下となることが多いです。
加害者側の行為の悪質性としては、
1.行為の悪質さ
2. 1度か複数回か、期間はどのくらいか
3. 被害者が拒否していたか
4. 行為の目的はなにか
5. 場所、時間
6. 被害者と加害者の関係性
7.他の者と平等か
などが考慮されます。
被害者の事情としては、
1. 身体的・精神的ダメージの程度、期間
2.入院、通院、投薬期間
3.会社で勤務することができなくなったか
4.謝罪があったか
などが考慮されます。
これらの事情を総合的に判断して、慰謝料が決定されます。これらについて、時系列に整理し、争点を明らかにしていく必要があります。