ご相談内容
地元では有名な飲食業の会社に勤務している女性です。会社では、主に事務作業をやっているのですが、会社の取締役の一人が、会社で周りに人がいない時や、歓迎会などで同席したときに、「好きだ」「キスしたい」などと、セクハラ行動があります。
気持ち悪いのですが、偉い人なので、会社を解雇されたくないので、さりげなく避けて過ごしています。
セクハラにあった日は、スマホのメモ帳にいつなにを言われた、などを書いていっています。
セクハラで訴えるとき、自分が書いたメモは証拠になりますか。勝手に、嘘を書いているだけだと、言われてしまうのが怖いです。
東京地判 平成26年2月28日事件
ご相談者様と似ているケースです。平成26年2月28日に、東京セクハラ会社役員事件があります。
この事件でも、セクハラの言動とされる証拠として、被害者が作成していた忘備録だけでした。この証拠の信用性が争点の一つとなっています。
セクハラの言動
会社の事務員である女性が、役員からしつこくセクハラ言動をうけて、女性は、その行動を、日時から詳細に日記につけていました。
例えば、
「1度寝てみたい。2回も夢をみた」
「60になるまでにぜひ寝たい 僕の夢」
「キスしたいんだけど、3箇所のどれがいい。肩 おへそ 内もも」
「明日スカートはいてきて 一日デートだね」
「あまり、そっちの方は好きじゃないみたいから、かわいそう」
「胸こないだ風船みたいに柔らかかった」
などのメモがありました。
実際の行動としても、主張したセクハラ言動は、後ろから抱きつく、においを嗅ぐ、胸を触る、携帯で話しながら肩をなでまわす、などの行動がありました。
証拠能力
提出された被害者の忘備録の信用性が、争われました。
忘備録の記載が、客観的にみて正しいか、加害者や周囲の人の自白と整合性がとれるか、また、セクハラに関する記載が、具体的であるか、が争点となり、その結果、裁判所は、この忘備録をセクハラ言動の証拠として認定しました。
しかし、逆に、主張したセクハラ言動の中では、この忘備録にないものは、確実性が欠けるとして、認定されませんでした。
判決は、慰謝料60万円と1割の弁護士費用6万円で、合計66万円の損害賠償を命じられました。
拒否しなかったこと
女性は、上司のセクハラ言動に対して、明確に拒否をしてきませんでしたが、相手の承諾なしに胸をさわるなど性的行動であり、これは人格的利益を侵害していることは明らかです。
また、女性は、セクハラが原因で不安障害を発症して、通院治療も行っていることから、相手にはっきりと拒否したしないに関わらず、精神的苦痛を被らせるとして、不法行為を構成していると、判断されました。
つまり、メモも証拠になるということです。