とるべき対応
セクシャル・ハラスメントの定義は、実は多義的です。
一応は、職場における労働者の意思に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇・降格・減給などの不利益を受けること、もしくは、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったので、労働者の能力の発揮に悪影響が生じることを言います。これが成立しているかの判断は、裁判でも一例一例異なり、難しいのが実情です。
しかし、現在は、雇用主側にも男女雇用機会均等法11条1項が、雇用管理上必要な措置を講じることを義務付けているのです。実際には、社内の苦情相談窓口を設けている会社がありますし、ここに相談をすると、調査委員会が調査をすることもあります。
行政機関では、都道府県に労働局雇用均等室というのが相談を聞き、問題があると判断をすると行政指導が雇用主に入ることもあります。また、紛争にまで至ってしまう場合には、紛争調整委員会に相談をすると、調停が行われることになり、調停制度も活用できます。
また、労働相談の窓口では、相談・事業主等との斡旋を期待することもできるのです。ここまでは、まずは1人で抱え込まずに相談をする方法を紹介してきましたが、完全に紛争状態に至っている場合には、弁護士に相談し、裁判所での調停をしたり、労働審判という手続をとることも考えられます。
訴訟提起の手段も考えられますが、各手続にはそれぞれ特徴があり、たとえば、公開の法廷で争うことなどに抵抗がある場合には、非公開である調停手続によるべきでしょう。また、調停や審判のほうが、手数料も安い特徴もあります。ただし、完全に証拠などが揃っていて、責任追及をしっかり果たしていきたいなら、訴訟の方がすぐれているでしょう。確実に「判決」という形での判断も示されます。
このように、各種手続一長一短ですし、何が適しているのかは事案によります。1人で抱え込まずに、まずは、第三者に相談をしていくことが不可欠だといえましょう。