大学教授にホテルの部屋によばれました

ご相談内容

大学の研究室で勉強している25歳の女子学生です。大学では、年に数回、地方で、研究発表の機会があります。同じ研究をしている学生数名と教授で、地方に出張するのですが、発表が終わるとみんなで打ち上げの飲み会もあり、盛り上がります。

先月も、研究発表の後居酒屋で宴会をした後、全員で宿泊しているホテルに戻ったのですが、その後、今度の研究内容の話をしようと、私だけ教授の部屋に呼ばれました。憧れていた優しい教授なので、部屋で飲みなおせるのも楽しいなと部屋に行ったのですが、そこで、ベットに押し倒されて体中触られました。

なんとか、逃れて自分の部屋に戻ったのですが、裏切られた気持ちでいっぱいです。アカデミックハラスメントとして、教授に慰謝料を請求したいのですが、ホテルの部屋の出来事で証拠もなく、男性の部屋に一人行ったことを合意ととられそうで、どうしたらいいでしょうか。

アカデミック・ハラスメント

職場で行われるセクハラ同様、大学など学校での上下関係においても同様のハラスメントが発生します。

大学の教授と生徒という関係においても、上下関係や、拒否したら単位をもらえないなどの断れない要因があり、行為者と受け手の立場の差が大きいためです。

仙台高裁秋田支部判決(平成10年12月10日)

ご相談者と同様の判例があります。短大の教授と女性研究に勤務する女性研究補助員が、学会出席のために出張した際に、ホテルの近くの居酒屋で飲酒し、その後教授の部屋で二人っきりで、午前0時ごろまで飲酒して会話しました。

翌朝、女性の部屋に教授がやってきて、「ちょっといい」と言ったので部屋に入れたところ、教授はいきなり女性をベットに押し倒し、服の上から胸をさわり、男性の下腹部を女性の下腹部に押し付けました。

女性は、急いで部屋を出て逃げだし、その後は、他の学生とともに、お昼もたべて観光して帰宅しました。

お互いの言い分

女性は、男性に対して損害賠償請求の訴えを起こしたのですが、男性は、ホテルの部屋の出来事を一切認めず、仕事への感謝で肩に両手をかけただけだといいはり、逆に、このような嘘の訴えを起こされたと名誉毀損の慰謝料を求める裁判を起こしました

判決

ここでは、ハラスメントの行為において、証拠がなく、お互いの供述だけを元に信用性を争点とし、事実認定されました。

はじめ女性が訴えた地方裁判所では、女性の行動が、強制わいせつの被害者として不自然であるとして、女性の供述は虚偽であると判断され、男性の請求が一部認められる結果となりました。

女性はこれを不服として、高等裁判所に提訴した結果、高裁では、原審(地方裁判所の判決)を取り消し、女性の男性に対する損害賠償請求である180万円を認め、男性の請求は棄却しました。

原審と全く異なる判決となったわけですが、ここでの判断ポイントは、「職場における性的自由の侵害行為の場合には、職場での上下関係や同僚との友好関係を保つために抑圧が働くために、これらの抑圧が、被害者が必ずしも身体的抵抗という手段を採らない要因として働くであろうということが、研究の成果として公表されているのあり、性的被害者の行動パターンを一義的に経験則化し、それに合致しない行動が架空のものであるとして排斥することは到底できないと言わざるをえない」として、女性がアカデミックハラスメントを受けたことを認めています。

これは、密室での出来事であっても、女性の供述の信用性を認めて、わいせつ行為が認定された例です。実はファイトバック事例といって、争い返される事例が多くなってきていますが、180万円の認容をした事例があることをご紹介しました。

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