先日、顧客や取引先からのクレームによる精神障害が仕事に起因したとして、厚生労働省が労災認定した人が過去10年間で78人に上り、うち24人が自殺していたことが判明との報道がありました。
販売店員やコールセンター、介護・看護職をはじめ、接客に伴い自分の気持ちをコントロールする必要がある仕事を「感情労働」と呼びます。ある意味で弁護士もそうかもしれません。医師も同じでしょう。そうした職場から今、顧客(カスタマー)による暴言・中傷など度が過ぎたクレーム「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の対策を求める声が高まっています。
クレームとの違いやカスハラを受けた場合、企業や医療法人はどのように対応すべきでしょうか。
カスハラへの対応について
カスハラは、いつどんな形で発生してしまうのか予想できません。たとえば、対応が悪いから返金をしなさいという要求であれば、どのような契約を締結しているのか、債務不履行と言って、契約で守られた約束を果たしていないから解除をして、お金を返す必要があるのか、ないのか、かんがえていかなければなりません。
また、たとえば毎日のように執拗なメールをしてくるカスタマーであれば、威力業務妨害罪の成立が視野に入りますので、告訴告発が視野に入ります。クレーム対応するにあたって、正当なクレームなのかどうかの判断が必要になるのはいうまでもありませんが、
そのためには、どのような主張をしているのかを明確にしなければなりません。製品を返せと主張をしているのか、サービスが悪かったと言っているのか、やりとりの経緯が重要になりますのでメールなどのやりとりを残しておくこと、電話対応の過程を検証できるように、断りを入れたうえで録音をしていくことが不可欠になってきます。
なお、カスタマー側がいくら正当な主張をしていたとしても、その方法が脅迫的であったり、強要をするような形のものであれば、それ自体が民法上の不法行為となりえる違法な行為になります。
これによってお店の業務が滞るなどに至った場合には、損害賠償請求をする余地が生じてきます。また、ネット上に名誉毀損罪が成立するような形での書き込みがなされた場合には、削除を求めて発信者情報開示請求を行い、また、損害賠償請求を求めたり削除を求めることも可能です。
何かしらアプローチをしていくには、相手方の住所・氏名などがないと取りうる手段や即効性がなくなっていってしまうので、対応の際には、住所や氏名をあきらかにしていくことも忘れないようにしてください。