結婚すると報告した途端、大勢の前で辞めるように発言を繰り返しました

ご相談内容

大手商社に事務で、6年間勤務している女性です。仕事も順調で、将来総合職に異動する希望も伝えて、勉強してきました。来年社内恋愛で結婚することになりましたが、夫も仕事をすることに賛成してくれているので、子供ができても、仕事をしながら、夫と協力して仕事を続けていくつもりです。

しかし、上司が古い考えの持ち主で、日頃から、女は家庭を守っているのが一番幸せだ、うちの女房もそういっている、と豪語する男性なので、結婚を報告するのは不安でした。結婚すると報告したら、じゃあいつから仕事辞めるの?引き継ぎどうしようか、と退職前提で話してきて、仕事を続けたいと言っても、取り合ってくれませんでした。

結局、押し切られる形で、退職して、転職することになり悔しくてたまりません。上司と会社を訴えたいです。

結婚を機に退職勧告

結婚を理由に退職を強要したり、ほのめかす会社はまだまだあるようです。古くは、1960から1970年代に、住友セメント雇用関係確認等請求事件(東京地裁昭和41年12月20日判決)があり、女性労働者の勝利となりました。その後昭和61年の均等法により、男女差別は明確に禁止されたことから、法律的には明らかな件ですが、現実には多いようで、この問題はなくなることはありません。

裁判事例

女性デザイナーが、結婚を機に社長から退職を強要された事件があります(東京地裁平成17年10月21日判決)。

この事件は、女性デザイナーが結婚することを社長に報告し、勤務を継続したいと言ったところ、社長から「これ以上働きたいなら、皆の前どんな処遇をするか言ってやる」と怒鳴られました。その後、女性の結婚披露宴のスピーチで、社長は、「デザイナーなのだから、これからは家庭を思うようにデザインしてください」「家庭を作ることに真剣に取り組んでほしい」と発言しました。

さらに夫や親族にも、侮辱的発言をしたことから、女性は耐えかねて、会社を退職しました。

女性は、社長と会社を相手に、退職強要による精神的苦痛で慰謝料185万円を請求し、判決では、社長の行為をハラスメントの不法行為であると認めて、社長と会社に、慰謝料22万円の支払いを命じました。

結婚を理由とした退職勧告はハラスメント

今回のご相談者のように、結婚を理由に、退職を強要する行為は明らかに不法行為です。

会社に退職する意思がないことを明確に伝え、それでも、退職を勧告するようであれば、どのような、強要行為があったかを正しく記録して、対応を考えてください。

退職勧奨そのものは、退職勧奨の回数や期間、退職勧奨を行う際の人数、具体的言動などを踏まえて適法性の判断がされるのが通常ですが、本件の場合、婚姻のみを理由としていることや、大勢の前で無配慮に、指摘がなされていることからしても、問題の多いケースでしょう。

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