事業主が、雇用者からセクハラ被害があったと、相談をうけたときにやるべきこと

人事部Tさんは、最近社員からセクハラ被害を受けたとのメールを受け取ることが何度かありました。その都度、加害者側と被害者側から話を聞きますが、言い分に違いがあり、対応に苦慮しています。社長に報告すると、会社名が公表されると困るので、とにかく加害者に自宅謹慎をしてもらい、被害者には給与を少し増して、口外しないように通達する、というので、納めています。

この対応が正しいのか、わかりませんし、何かあったら、自分の名前も公表されて、解雇になることが怖くてたまりません。

セクハラの相談を社員から受けたとき、とるべき正しい対応を教えてください。


相談を受けるときの注意点

  1. ゆっくり話を聞くこと
     当然にも思えますが、重要です。というのは、男女雇用機会均等法などにより、事業主には、雇用管理上必要な措置をとることを義務付けられており、これらを十分に果たしていない場合には、債務不履行責任を問われるリスクを負います。この点からも、事実関係をしっかり聴取し、生じた事実を確定していかなければなりません。話をただちに片付けようとしてしまうと、のちの責任追及に至る可能性があるのです。
  2. 被害者の心のケア
     被害者は、感情的になってしまうひともいれば、冷静に淡々とハラスメントの事実を主張する人もいるでしょう。大切なのは、生じた事実を語ることによって二次被害に発展することがないよう配慮する必要があることでしょう。
  3. 被害者を追い詰めたり避難しないこと
     心のケアなく、追い詰め、避難をすることになると、事業主側は事実をもみ消そうとしているのではないかと疑念が生じてしまい、生じた事実関係を正確に把握することができず、また、職場環境維持・調整義務違反に結びつくこともあり得ます。
  4. 被害者の話に疑いを挟まないこと
     少なくとも、裁判の現場などで事実を争う局面ではない以上、まずは自体を把握するためにも、被害者の話にしっかり耳を傾ける必要があるでしょう。実際のところは、セクハラは密室で行われることが多く、のちの立証の問題を抱えているのは事実ですが、裁判の現場ではないのですから、話をしっかり聴取する必要はありましょう。
  5. 被害者の感性を肯定すること
     被害者は、衝撃的なことがらに触れ、事実を語るだけでも一苦労の状態にあることがほとんどです。感性を肯定し、話を聞くだけでも、どのような事実関係があったのかを把握するには適切であることがほとんどです。否定などせず、丹念に話を聞くことが肝要でしょう。 
     
  6. 立証の問題
     セクハラは密室で行われることが多いので、立証に苦労することが多いのは事実です。しかし、事実の立証が必要とされるのは、争いや他の事実と整合しないところなのです。また、簡単な手段では、録音、被害者の日記、メモ、ノート、利害のない第三者の供述になります。
  7. 証拠の収集・確保
     証拠の収集は難しく考えることはありません。記憶だけに頼ることにならないように、事実を書き溜めていくだけでも、一つの証拠になるのです。そのうえで、裁判などの現場では供述の信用性を判断していくことになる、要は、最後は話の整合性が全てなのですから、証拠の確保を難しく考えてはいけません。
  8. 共同責任
     実は、セクハラ行為の場合被害者に同意があったとの抗弁が出されることが多いのですが、裁判所の裁判例では、被害者の同意に関しては慎重な判断を求めることを明示しています。仮に加害者個人の責任が否定されてしまったとしても、職場環境配慮義務の一環として、セクハラ行為があることが予見できたはずであるだとか、予見できたのに回避する義務を怠ったなどの事実が重なると、法人側にも責任追及されてしまう余地があるのです。
  9. 相談の引き継ぎ
     たらい回しがないようにすべきでしょう。法人側の義務と、加害者の義務は一種の相反する関係に立つものです。よく聞く話では、法人側の顧問弁護士に相談したなどですが、法人側の顧問は、法人側から雇用されている地位にある以上は、必ずしも中立的な立場でのアドバイスが期待できないのです。

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