パワハラで、刑事責任を問われますか?

某警備会社に勤務していたAさんが、無断欠勤を繰り返して、会社を退職せざるを得なくなりました。
Aさんは、会社を退職することになったのは、当時の上司であるOさんが計画的に自分を退職に追い込んだと逆恨みして、退職後しばらくしてから、1年弱に及びOさんの自宅付近を徘徊して、本人や家族に対して、嫌がらせを繰り返しました。玄関先で、「ばかやろう」「ででこい」などと叫んだり、ダンプカーを玄関先に止めて、エンジンを空ぶかしの行為を繰り返しました。
この結果、Oさんは著しい精神的不安を覚えて、通院と入院を繰りかえす、抗うつ状態に陥りました。


傷害罪の成立も認められています

この事件の判決は、以下のように述べています。

「人が発する音や人の動作が心理的ストレスを生じさせ、とりわけそれが同一の人に対して繰り返しなされる場合には強度の心理的ストレスとなり得ることは経験則上明らかであり」、として、心理的なストレスを与えた結果と、原因となるべき行為の因果関係を肯定しています。そのうえで、「被告人の一連の行為は、約7ヶ月の長期間、ほぼ連日に渡って被告人が元上司及びその家族に向かって・・威嚇的動作によりなされたもので・・・心理的ストレスを生じさせ」とも述べ、傷害罪の成立を肯定しました。この裁判例は、平成6年の名古屋高裁の判断です。

現在は、PTSDの被害をめぐって研究や最高裁判例も出現しました。

ただし、最高裁の判例は監禁のケースなので、職場によるいじめを切り口としているとはただちにはいえませんが、本件のように職場でのうらみがつのって行った行為であっても、傷害罪の実行行為として認められる余地はあるのです。名古屋高裁は、未必的故意も認定し傷害罪の成立も認めています。

ちなみにPTSDは、たとえば被害者宅に約2000回に及ぶ無言電話などをかけ続けた結果、PTSDになった事例でも傷害罪の成立を認めた裁判例があり、必ずしも暴行などの有形力の行使をしていなくても、成立するのが傷害罪なのです。長期間にわたりラジオや目覚まし時計のアラーム音を大音調で流し続け全治不詳の慢性頭痛症にさせた場合でも、傷害罪の成立を肯定した最高裁判所の判例は有名なものです。

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