事件の経緯
損害保険会社に勤務する男性は、勤務態度や成績に問題があり、上司からたびたび注意を受けていたが、改善は見られませんした。
上司は、その男性社員に対して「意欲がない、やる気がないから会社を辞めるべきだと思います。当SC(サービスセンター)にとって迷惑そのものです。あなたの給料で業務職を何人雇えると思いますか。これ以上迷惑をかけないでください」と記載したメールを送付した際、このメールをSCの全社員にも送信しました。
男性社員は、これを名誉毀損として、慰謝料100万円を請求して、上司に対し訴訟提起した事例です。
判決
第1審では、同僚らが、男性社員の業務態度を把握しており、上司の出したメールの内容は、正しく理解しているため、男性社員の名誉を今更傷つけたとは言えないとして、男性社員の請求を棄却しています。
その後、男性社員は控訴し、控訴審では、メールの内容は侮辱的であり、名誉を毀損しているとして、請求を認めましたが、慰謝料の金額は5万円にとどまりました。
不法行為の成立
今回、上司が当該男性社員に対する叱責メールを、全社員に送付したことが問題になっています。
控訴審では、本人への叱責メールを全社員まで送る必要はなく、それは業務範囲を超えていると、不法行為の成立を認めてはいるももの、一方、当該男性社員の普段からの勤務態度、成績についての会社の評価、度重なる注意を無視していることも考慮し、慰謝料を5万円に抑えられています。ただ、パワハラ行為そのものについては認めていることは確実です。
パラハラ行為の判断は、行為そのものを認定すると同時に、発生に至る事実関係も考慮されると指摘ができます。