妊娠後、軽い仕事への異動を申し出ましたが、文句を言われて放置されました

マタハラの判例

介護サービス会社に勤務する介護職員の女性が、妊娠したために、機械を使用した入浴介助や車椅子を抱えて階段を上り下りする重労働から、軽易な仕事への転換を申し出たところ、介護サービス会社の営業所所長から、できない業務が多いと文句を言われたまま、1ヶ月以上放置されました。

3ヶ月後にようやく配置転換され、その後育児休職を取得しました。女性は、営業所長と会社を相手にして、慰謝料500万円を求めて提訴した裁判例があります(福岡地裁小倉支部判 平成29年4月19日)。

マタハラの態様

女性が、会社の所長に妊娠を報告して、妊娠中に重いものが持てないことを理由に、軽い業務への配置転換を願いでたところ、所長は、女性に対して、「何ができて何ができないかを明確にしろ」と指示するだけで、その後の対応はありませんでした

女性は、その後1ヶ月間、妊娠中にも関わらず、重労働を行っていました。

その後、女性は、再度所長に、できない業務を報告したところ、

「何よりも何ができません、何ができますちゅうのも不満なんやけど、まず第一に仕事として、 一生懸命していない人は働かなくてもいいと思ってるんですよね」

「 仕事は仕事やけど、他の人だって、病気であろうと何であろうと、仕事っちなったら、年齢も関係ないし、資格がもちろんあるけど、もう、この空間、この時間を費やすちゅうことに対しての対価をもらいよるんやけえ、やっぱり、うん、特別扱いは特にするつもりはないんですよ」

「 万が一、何かあっても自分は働きますちゅう覚悟があるのか、最悪ね。だって働くちゅう以上、そのリスクは伴うやけえ」

「 妊娠がどうのとか、本当に関係なく、最近の自分の行動、言動、いつも、ずっとずっと注意されよったことを、もう一回思い出してもらって、取り組んでもらって、それが、改善が見えない限りは、本当にも、全スタッフ一緒ですよね。更新はありませんよちゅうのは、そういうことですよね」

「 本当にこんな状態で、制服も入らんような状態で、どうやって働く?」

「 きついとか、そんなのもあるかもしれんやけど、体調が悪い時は体調が悪い時に言ってくれて結構やし。やけど、もう、別に私、妊婦として扱うつもりないんですよ。こういうところはもちろんね、そうやけど、人として、仕事しよう人としてちゃんとしてない人には仕事は無いですから」
などと発言した。

その後も、所長は、女性に対して、医師に確認して、できる仕事とできない仕事を申告するよう言い、配置転換はしなかった。女性は、その間も、重労働の業務を行い、体調が悪いときは、同僚に助けてもらったりしていた。

3ヶ月後に、ようやく所長が、上司と相談し、女性に対して容易な仕事への配置転換を行った。

不法行為

女性が、所長に対して、妊娠を報告し相談したにもかかわらず、面談時の発言は「妊娠しているについて、業務軽減の要望をする事は許されないとの認識を与えかねないもので、 相当性を欠き、社会通念上許される範囲を超えたものであって、妊産婦労働者の人格権を介する者と言わざるを得ない」、と、不法行為を構成するとしました。

また、 所長は女性に対して、職場環境を整える義務を負っていたにもかかわらず、なんら対応をしなかった事は、職場環境整える義務に反するために、これも不法行為を構成するとしました。

慰謝料

この判決では、上記の不法行為を認め、所長の言動が不法行為にあたるとして慰謝料35万円の支払いを命じました(会社は、使用者責任により、連帯して責任を負うとしました)。

所長の発言自体は、できる範囲で工夫するという意図があり、いうあがらせの意図はなく、違法性まではありませんでしたが、妊産婦労働者への発言としては、不法行為にあたるとした点で、慰謝料を認めています。

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